「日韓合意」について考えること

 去年の暮れだったか、いわゆる「日韓合意」なる二國間の約束が行われた。文書化はされなかったから単なる取り決めで、すぐになかったことになる。アメリカを始めとする主に白人国家がそれなりの、あるいは高く評価をする中で、日本国内では与党内でさえ結構みそくそに評価された。
 
 問題点の第一は、「軍の関与」という部分。朝日新聞が捏造して韓国に教えたことによって発生したいわゆる「従軍慰安婦」は、軍の強制が、軍の強制拉致があったかどうかが問題とされてきた。「従軍慰安婦」という用語はこれも朝日新聞の植村記者によってつくられた造語で、「慰安婦」はいたがそれ以外のものはいなかったとされてきた。植村記者は当時あった女学生が工場で勤労奉仕する「女子挺身隊」からの連想で「従軍慰安婦」なる造語を行ったと思われる。

 この「日韓合意」の報道を受けて、多くの欧米のメディアが反応したように、「やはり軍の関与はあった」のだろうか。
 彼らが考え報道したような関与はなかったと言っていい。
 日本軍の関与があったとすれば、それは国会質問を受けて、安倍首相が答弁したように次の三点のみの関与があったのは事実である。
 その三点とは、1)慰安所のモニター、悪質な業者の取り締まり、指導 2)慰安婦の衛生管理 3)慰安婦および慰安所の安全の確保
 これらの関与は韓国側のいうものと全く異なり、なかったというに等しい内容と言えるのだ。この点が、保守、右派系、愛国たち憤慨した点であった。

 不思議とも思えたのは、「日韓合意」のこの問題点を直ちに指摘したのは中山恭子議員(「日本のこころを大切にする党」)だけということだった。男どもしっかりせんかい!と思ったことだった。
 かつてサッチャー首相の時代、フォークランド島をめぐって領土紛争が起こった時、誰一人積極的に反応を示さない議員たちを前に、彼女が言い放った言葉は、「この議場にいる男は私一人なのですか!」だったという話を思い出した。中山恭子さんはサッチャーとは異なりきわめて優しい大和撫子なので、激しい言葉遣いではないけれど、日本人の誇り日本人の守るべき伝統を軸にこの合意に異を唱えるスピーチは聴かせるものだったと思う。

 「日韓合意」に直ちに反応した欧米メディアは全て、「やっぱり関与していたのか」というものだった。それにしてもその内容がすごい。一つ二つ挙げてみようか。
◎2015-12-30 The Sun (UK)
一日に40人の男とセックスさせられた。ついに日本がおぞましい慰安婦制度について謝罪した。生存者のチョンオクサンは、朝鮮半島北部のハンヨン県の自宅から警官によって誘拐された時、まだ13歳だった。多くの被害者は14歳から18歳だったが、その理由は軍が処女を欲していたからだ。誘拐に抵抗した家族は殺されたケースがあった。
◎2015-01-01 New York Times, To the editors (U.S.A)
 生存者の証言によれば、この残酷なシステムの標的は生理もまだ始まっていない13,14歳の少女だった。彼女たちは積み荷としてアジア各地の戦地へ送られ、日常的に強姦された。これは戦争犯罪のみならず、幼女誘拐の犯罪でもある。
◎2016-01-03 Ottawa Citizen (Canada)
 多くの被害者は14歳から18歳の少女で、軍の狙いは処女だった。抵抗する家族は殺されるケースもあった。41万人の少女や女性が誘拐され、生存者は46人のみ。安倍の謝罪は誠意がなく、安部の妻は戦争犯罪者を奉る神社に参拝した写真を公開している。10億円は生存者を黙らせるための安い賄賂だ。

 日本軍の「軍用慰安婦」に関わる外国メディアの報道はこんなものにとどまらず、気持ちが悪くなるほどのえげつないものである。兵士たちは天皇からの贈り物として処女を賜ったなどというのもあって、驚いた。それにしても、どうして、こんな風に「待ってました」とばかりの報道になるのか。それらについては、改めて別項で書きたいと思っている。

 他の問題点は、日本政府による8億ドルの供与。そして日本大使館前の慰安婦少女像の撤去。などがある。この二つは交換条件と考えられたが、日本政府はそうではないとしている。しかし、8億取り供与は像撤去を確信してからにすべきだという主張も盛んだ。
 そして、安倍政府の最大の眼目だった思われるのが、最後に置かれた「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」というものだったと思われる。
 この「不可逆的」という外交文書では聞きなれない文言が置かれたのはどうしてなのか。
 そもそも外交文書というものは一度発せられれば、そのまま何年たっても変わらず存在するもので、もともと不可逆的なものなのである。

 ところがこれまで日韓の間に結ばれた多くの条約や協定は、1965年に結ばれた「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」通称「日韓基本条約」を始めとして、全然守られていないのである。もともとこれが守られていれば、今回の「日韓合意」の必要はなかったのだ。
 そこで、もう約束は守らないといけないよ、守りますねという念押しをしたのが、「不可逆的」の本意なのだと思う。ここにおいて韓国大統領は海外において、「慰安婦問題」を取り上げたり拡大拡散することはできなくなったと言える。

 それにしても、あんなにしつこかった韓国がよく合意したものだとも思うのだが、そこは「軍の関与」を内容に触れないまま盛り込むと大きな歩み寄りによって、合意せざるをえなかったとも言える。
 しかし最も大きかったのはアメリカの圧力だった。アメリカは日米、米韓という軍事同盟を組んでいる。だから日米韓という三國の軍事同盟があるかに誤解されているようだ。日韓に軍事同盟などありはしない。韓国は仮装敵国として北朝鮮とともに日本を考えているという説さえあるのだ。
 実際問題として、こと安全保障に関して日韓が話し合うことは全く無理で、そこにアメリカが同席した初めて可能になるという昔からの状況なのである。

 東アジア情勢が緊迫化するなかで、衰退を自覚するアメリカは、中国の存在を考えながら日韓の対立を緩和する必要を感じ合意を迫ったものと思う。そして、その立会人となった外国政府は全てこの合意を良しとした。
 良しとしたのだから、政府間レベルではそれでいいのだと思う。
 以後韓国政府はこの問題を蒸し返すことはできなくなった。そうでないと世界から嘘つき国家と目されことになるわけだ。努力目標は慰安婦像撤去の努力なのであって、ボールは常に韓国側にあることになった。

 ところで、この珍しいとも言える「不可逆的」という言葉、外交的な文言にこれは登場したのは今回が初めてではなかろうか。
 もともとこれは化学用語なのである。化学反応には二つあって、これがほとんどなのだが不可逆反応、それと可逆反応。
 例えばAという物質とBという物質が反応してABという物質ができたとする。この時AもBもなくなりABだけになる。このABが再びAとBに戻ることはない。なぜならそれが不可逆反応だからである。

 今回の「日韓合意」は約束をチャラにはしませんと約束させるという意味での「不可逆的」であった。しかしそれは、あくまでも政府間のことなのであって、国民の、民のことではない。すでに両国民の間ではこの問題に関する議論がかまびすしい。
 韓国政府は、あれは民間のことなので深くかかわることは・・・とかなんとか言っているだけである。それが合意の不可逆的な対応なのだろうか。両国民はこの合意に関与していないのだから、可逆的と考えてもいいのである。

 化学反応において、可逆反応の場合はどうなるのだろうか。次のような反応があったとする。
 A+B ⇄ bA+aB
可逆反応の場合、このように両矢印で表記することになっている。この場合、反応は右に進むが、同時に逆反応も起こるので、その右行きの反応と左行きの逆反応の速度が一致した時、反応は停止する。実際は停止しているわけではなく右行き左行きの反応速度が一緒になっているので、反応が終わったように見えるわけである。
 この状態を平衡状態と呼ぶわけで、この時にはA,B,bA,aBの四つが同時に存在することになる。
 そしてこの平衡状態は、温度など周囲の条件を変える変えることによって4つの物資の濃度が変化する。つまり平衡は右とか左に移動するということが起こるのである。
 
 国の民意というのは、各種の考えが混在するある平衡状態と考えることができる。
 日本の国民はネットメディアの発達によって、かなりアメリカ占領軍が教え込んだ日本人弱体化計画の影響や主に新聞・テレビによって繰り返し刷り込まれた東京裁判史観から抜け出しつつあるとも言える。
 それが証拠に民主党は一向に伸びない。日本国民がメディアの嘘に気づき始めたからではないかとぼくは思っている。
 日本国民は不可逆的である必要はない。「軍の関与」なぞなかった。「従軍慰安婦」などいなかった。軍用売春婦がいただけという理解を広める必要がある。性奴隷などというものは縄文の昔から存在しなかった。奴隷がいて、虐殺を繰り返していたのは、あなたたちの国ではなかったのですか。
 こうした史実を穏やかに凛として主張することによって、正しい近現代史を知る日本人が増えていくという平行移動が起こり、その民意の移動がそのまま世界における日本の発言力につながっていくのではないか。それによって、世界はより平穏な状態に移動してゆくのではないか。そんなふうに考えたりもするのです。