「ラトック1遠征を終わって」(1/3)

ラトック1峰遠征を終って  高田直樹
 成功したにしろ、失敗したにしろ、遠征隊に関ずる分析は、
すべて結果論である。ぼくはそう思っています。だから、いか
にも科学的な装いで行われる因果関係の分析は、時に、実に馬
鹿げた結論を引きだすことがあります。
 というようなことを充分承知したうえで、なおかつ、ラトッ
ク1峰隊の分析を試みたいと思うのは、一つには、今の山の世
界で、行ってきました、登れました、では何とも芸のない話で
あると考えること。また、テクニカルなデータを披露してもあ
んまり意味はないし、第一、ぼく自身、むろんベースのお守り
をしていたのではないにせよ、頂上に立ってはいない以上、そ
れはぼくの任ではないと思うのです。
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39年前に『山岳』に載せた遠征報告

 39年ぶりにラトック1峰が登られたことを知った。それで、1979年にラトック1に成功して帰国後、確か1年後だったと思うのだが、日本山岳会の会報・『山岳』に報告を書いたことがあったことを思い出した。

300ページの大冊『山岳LXXV』 山岳75年

 書架を探して見つけた『山岳第七十五年』には、確かに「ラトック1遠征を終えて」というぼくの稿が載っていた。
 その分厚い会報を開きながら、ぼくはあの頃のことを思い出していた。
 正直いって、あの頃、この遠征の成功を素直には喜べず、なぜか他人事のように見ようと努めていたようだった。
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