それは創作中華だった

 福井のフジタさんからのお誘いで、富田の「溢彩流香」という中華料理店へ行ってきた。「いーさいりゅうしゃん」と読む。
 阪急の高槻で各停に乗り換えて行ったのだが、JRだとわかり易いというが、十分ほどの場所はえらくわかり難くて、尋ねた駅員も説明に困るくらいだったので、広い通りに出てタクシーを拾った。

たったひとつの看板


左手にキッチンがある。

 このお店は、ネットにたくさんの情報が載っていて、【魔法のレストラン】とか、半年待ちとか書いてある。
 その場所辺りに着いても、看板などは見当たらず、商店の人に尋ねて、2階であることがわかった。
 なんの変哲もないお店で、なんでそんなに騒がれるのか不思議に思った。

戸を開けると、縦長に角テーブルが奥へと一列に並んでいる。20人の収容人数であることが知れた。
 フジタさんが誘ったのは10人だったらしく、席は奥の10席だった。

 最初に出てきたのは、まぐろのパクチー和えとミニトマトのしょうゆ漬けとさばの焼き物の前菜。

 お酒の持ち込みを許してもらえたらしく、福井の銘酒が2種類紹介された。
 早瀬浦と二左衛門の二つで、初めて聞く名前だった。有名なお酒だそうで、流行とも言える甘口のきりりとした味だった。
 中華と聞いていたので、紹興酒にしようかなと思っていたのだが、前菜を食べて、それはやめにした。

入手困難な福井の地酒。


これも有名地酒という。


やさしい味


 卵スープは、フレッシュなコーンが入っていて、優しい味だった。

水餃子。

 写真ではよく分からないのだが、この水餃子には2種類あって、色がわずかに異なっていて、白っぽいのとそうでないのとがある。中身が透けてそういう違いになるようだ。
 白っぽいのの中身は、白菜と豚肉、そうでないのは牛肉とセロリだった。
 これまでに何度か、チャイナの女性が作ってくれた水餃子を食べたことがある。そうした餃子味は、それぞれの家庭に伝承されているもののようである。この餃子もそうした系列に属するが、形が小さいことと皮に工夫がされていると思った。

もち米の焼売。

 こんなのは、初めて食べた。お米がピカピカ輝いてなんとも美しかった。なんとも美味しいとしか言いようがない。予約困難の理由がわかったような気がした。
 

透明な皮の焼き餃子。

 この透明な皮の焼き餃子には、白菜の浅漬け、エビ、くわい、豚肉が入っている。透明な皮は、小麦粉ではなく、トコロテンのようなデンプンを調合して作るという。

茄子のピータンソースかけ

 茄子の煮付けにピータンソースがかかっているだけの料理。茄子の煮付けは日本の味そのもので、少し冷たかった。
 だいたいどの料理もあったかいけれど暑くはない。ジャーとかいうあの焼く時の料理音がないのだ。焼餃子にしても、ほんの少し焦げ目が付いている程度なのである。

豚肉とゆり花の豆腐よう炒め

 百合の花というのは初めてだった。豆腐よう炒めというが、豆腐ようの味はあんまり感じられず、家でいつも食べている豚の角煮を思い出した。

干し肉の焼き飯

 普通にイメージする焼き飯とは大いに異なる。だいたい焼いた感じがしない。焼きも炒めもしていない感じなのである。冷たくはないけれど熱くもない。ふんわりと暖かい。決してパラパラではないが、団子になることもなく、一粒一粒はピカpかと光っているのである。干し肉を極めて細かく刻んだものが入っていて、これが味の主体のように感じた。かなり強く胡椒が効いていた。なんだかかやくご飯という感じなのだった。美味しかった。

プリンのようなデザート。ソースがやさしい甘さだった。

 説明を聴き漏らしたが、プリンであることは間違いない。甘みを抑えたソースは好感が持てた。

 ネットで「いーさいりゅーしゃん」とググると山ほど情報が出てくる。中国人のおばさんがまるで自宅に招いた客人に供するように料理を出す。
 中華料理に特有な炒める音、シャーとかジャーとかいう音が全くしない。出てくる料理は熱くはなく、ほんのりと暖かく、味も薄味で、これは中華の味ではない。
 こんな中華は初めてだったし、中華にも創作料理があったのかと思った。
 主人の女性は中国で駐在していた日本の技術者の男性と知り合って結婚したのだという。彼女の言によれば、子供の頃で家で食べた味を思い出して作ったというが、
おそらく、日本人の旦那が好む味を作ろうと努力した結果こうした料理が出来上がったのだと思う。
 間違い無く、これは日本人が好む味の人気店であることは確かで、ほんとに予約が取れないという。毎年10月1日に翌年の予約の受付を始めるが、2日で完全に埋まるという。
 普通の食材を使い、普通の味付けをし、心のこもったあしらいをする。こんなお店があるとは、驚きだった。

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