NHKスペシャル「東京裁判」を見る

 4夜連続のNHKスペシャル「東京裁判」を見ました。
 確かにパル判事の主張を取り上げているとはいえ、彼に対する各国判事の対応はなんとなく嘘くさい。インドは独立したかしないかの時期で、白人の宗主国の判事達があれほど立派に振舞うというのは、きれいごとすぎる作り物の感じが否めなかった。
 このドラマはNHKの企画原案によるもので、オランダ、カナダとの合同製作を唱っている。とはいえ、これは看板だけで客観性をてらういかにもNHKらしいやり方と思えた。


 今我が国では、東京裁判に対する批判的な見方が徐々に変わり始めていると言える。特に左翼やリベラルの主張がどんどん論理的に破綻するような世界情勢の中で、戦後ずっと覆い隠されていた真っ当な主張が日の目を見だした。
 昨年、安倍首相がアメリカの議会でスピーチを行ったことによって、いわゆるコミンテルン史観は吹っ飛んでしまった。しかし、自虐史観とも称される東京裁判史観は依然として存続した。
 しかしそれも、徐々にボロが出だしているともいえる状況が生まれつつある。

 こうした中で、さすがNHKともいえるドラマが作られた。それがドラマ「東京裁判」である。ぼくははそう思いながら見ていた。
 確かに、「人は戦争を裁けるか」などという大仰なサブタイトルをつけてはいるが、裁かれた国の国民としては、他人事ではないのだ。
 NHKが本当に日本の国の放送局であるのならば、日本人の立場に立って作ってもらわないと困るのだ。

 描かれる判事はみんな、嘘すぎるくらい立派なのであり、それはもしかして本当だったのかもしれないけれど、国際法の専門家はパル判事以外誰もいなかったことが、ドラマ中どこにも示されていないのはどうしたことか。ほとんどは民事専門の弁護士だったり、偉そうに「戦争は裁けるか」などというテーマを掲げてみても、国際法の素人が戦争犯罪など論じられるはずがないと思うのだ。

 NHKは常にそうであるように、嘘は言ってはいないようだ。今の時代、そしてこんな重いテーマの場合、嘘があったらとんでもないことになるということぐらい、少しは分かってきているのだろう。しかし、いつもの伝で、都合の悪いことは無視しパスする。
 このドラマは、「東京裁判の判事たちの記録の手記等の資料をベースに制作された(Wiki)」そうだ。それならこんな事実はどうしたのだろう。
 仏代表のベルナール判事は「条例は被告に弁護のために十分な保障を与えることを許していると自分は考えるが、実際には、この保障は被告に与えられなかった」と裁判を批判した。
 ここでいう条例とは、ニュルンベルク裁判の根拠となった国際軍事裁判所憲章を参照して作られた極東国際軍事裁判所条例のことである。

 裁判長のウェッブは、「ドイツと比較した場合、死刑に相当する被告は1人もいない」という考えを持っていた。ウェッブに限らず多くの判事はこの裁判に疑問を抱いていたことが明らかになっている。
 「いまや海外の国際法学者の間では、「東京裁判はアメリカの占領行政にすぎず、法的には無効である」という見解が圧倒的多数を占めている。《中西輝政 「靖国と日本人の心」》」
のだが、そんな立場に立てば、そもそもNHKの意図するドラマは作れなかったと言える。

 パル判事の事後法では裁けないという主張が紹介されたこと。彼の主張に影響されてゆく判事達へのイギリス・アメリカの判事の工作。ニュールンベルグ裁判と並べようとする強引な圧力。マッカーサーの隠然たる指示などが明らかに描かれた点は評価できる。
 しかし、そういうことを読み取るのには、それなりの素養がいるのではないかと思うのだ。ネット上でのこのドラマに関する記事を見て、この感を特に強くした。
 かなりの素養というか予備知識がないと、この裁判が報復の手段としてのセレモニーだったことが見えない。それどころか、東京裁判の判決は、世界の賢者によって作られたなどというとんでもない見方を振りまくことになる。それこそがNHKの狙いだったと言えなくもないのだが。

 ぼくたち日本国民が本当に知りたかったのは、弁護団の言説さらには東条英機氏の主張だった。それがなければ、所詮このドラマは、報復と見せしめの儀式としてのドラマの上塗りとなるだけだったと言える。
 マッカーサーはこの「極東国際軍事裁判」の開始を天皇誕生の日と同日とし、死刑の執行は皇太子つまり今上天皇の誕生日に行わせた。
 今の天皇陛下は、誕生日のたびごとに死刑判決を受けて死んでいったあの7人の人たちを思い出さねばならない。

 なんという悪辣で執念深い男なのか、とぼくはいつも思ってしまう。吊るされてすぐ荼毘に付された遺骨は、遺族への返還は拒否され、東京湾に投棄された。
 しかし、遺骨は存在している。一体どうしてなのか。
 夜陰に乗じて遺骨を盗み出した立派な愛国の士がいたという話なのである。
 日本のシンドラーとして有名な杉原千畝をご存知だろう。あの杉原氏よりももっと多数のユダヤ人を救ったのが東条英機だったというのをご存知だろうか。
 東条はヒトラーとは全く違うのである。