
なんとも挑発的なタイトル
このタイトルには前にもう一つ足された文句があって、それは「早死にしたくなければ」なのである。
つまりこの本のフルタイトルはなんと『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい』という、なんともショックな、とんでもない表題の本なのである。
この本の中で、同意見の人として、武田先生が挙げておられる解剖学者の養老孟司先生、ネットで探したら、週刊朝日2015年11月20日号のインタビュー記事が出てきた。
その記事を少々引用してみる。
禁煙、分煙が進み喫煙者にとっては風当りの強くなってきた日本。しかし、解剖学者である養老孟司さんは喫煙者。作家・林真理子さんとの対談でもダンディーにたばこをくゆらせていたそうだが……。
* * *

養老孟司、解剖学者
ようろう・たけし/1937年、神奈川県生まれ。62年、東京大学医学部卒業。81年、東京大学医学部教授に就任。95年、退官し、同大学名誉教授に。心や社会の問題を、脳科学や解剖学の知識をもとに解説し、多くの読者を得る。89年、『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『ヒトの見方』『解剖学教室へようこそ』『唯脳論』など、著書多数。近著に『文系の壁』『「身体」を忘れた日本人』。昆虫研究でも知られる。
養老:僕が解剖した人、みんな真っ黒だったもん。じいさんもばあさんも。肺が黒くなるのは、消化できないゴミが入って、細胞が食ってためてるからなんです。
林:たばこを吸おうと吸うまいと……。
養老:大差ない。
林:先生が言うと説得力がありますよ。
養老:というか、肺がんに関してはそういう話になってるんです。ここ10年間、喫煙率はきれいに下がってるのに、肺がんの患者数はきれいに上がってる。そのグラフを二つ並べて、「肺がんの原因は禁煙だ」と言ってるんです(笑)。(週刊朝日2015年11月20日号)

外国のタバコには、各種のグロイ写真がある。日本では、財政制度等審議会で、こうした写真の掲載は見送られた。
それにしても、武田先生の上記の本に関しては、ネット上に多くの反論が載っています。感情的なものは別として、冷静な反論でも、武田先生の示した喫煙率と肺がん発生率との反比例の関係を完全に否定できているようなものはないようです。つまり、喫煙率と肺がん発生率の正比例関係を示したグラフはありません。
この原稿を書き始めた時は、こうした反論を、『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい』の内容を適当に転記しながら潰して行こうなどと考えていました。
それには、この本をブックマークをつけながら、つぶさに読んでいかねばならない。それはけっこう大変だ。などと考えているうちに日が経っていました。

相方は、大高美希さん。
武田先生はこう語りました。
あのねぇ。ぼくは科学者だから、たばこのにおいが嫌いだからとか、たばこを旦那が買うから家計を圧迫するとか、それとは関係なく話しますからね。それは別の視点ですから。あのね、麻生さんが「こんなに肺がんが増えてるのに、タバコって害なの?」。こう言ったら、朝日新聞を買ったらこう書いてある。
医者は、たばこを吸うと3.6倍かなんか癌が増える。それからなんかもう一つ言ってましたが。それは麻生さんに答えてないんですよ。麻生さんの質問は、個別の研究をすると、たばこを吸うと肺がんが増えるというけど、がんセンターはいうけど、じゃあたばこがこんなに減ってるのに癌が増えてるの?という質問だから。そっちに答えなけりゃならない。ちょっと図をお願いします。

この図には書き込まれていないが、女性の喫煙率は17%で変化しない横線になる。
このデータが出てきてるのに、たばこを吸ってる人は何倍の癌になりますって繰り返しても、説明にならないんですよ。そう、答えにならない。
それに今度みたいに副流煙が健康に害があるというなら、まずは国民に対して、なぜ女性の喫煙率が17%と同じであるのに、男性の喫煙率がこんなに下がってしかも分煙化してるのに、女性の肺がんが増えるかと。
これをたばこのためと言ってたら、何が起こるかといったら女性で肺がんで死ぬ人が可哀想だと僕いってるんですよ。だって肺がん止まらないんだから。
あのそこはねぇ、日本国民の冷たいところでね、誰かが肺がんなって死んだって俺知らねえよって、副流煙悪いってことにしとこうじゃないかと。それはそれでいいけど、そう風にすると肺がん対策が大幅に遅れるんですよ。だって今何にも肺がん対策やってないんですよ。
なぜやってないかといえば、たばこたばこちゅって、お前他のこと言うなと、そうしないと利権取れないぞとやってるから。だから子分になっちゃうんです。だからねぇ、その被害を受けてる人を救おうという気持ちがないと。だからねぇ、俺はちょっと煙が臭いとか、煙が臭い方は後からやればいいんで、まずは肺がんになる人を救わないと。男性なんかもう8万人かなんかになってるんだから。
そうそう、少女の連続殺人が起こってるのに嘘の犯人を逮捕して、これだこれだと言ってるうちにまた少女が殺されるよって僕は言ってる。
それをねえ、武田はたばこの害をどう思ってるんだ、いや違うんだ、僕はあの肺がんで死ぬ人可哀想だから。特に女性はね、いくら夫が禁煙したって肺がんなっちゃうんだから。今ね、女性はね、乳がんの次、肺がんは2番目ですよ。
男はね、今肺がんは第1位ですよ。だからもう癌のトップなんですよ。それ間違ってねえ、メンツねぇ、メンツと利権この二つ。
いやぁ、これ衝撃の口説でした。だいたいぼくは、この冒頭に紹介した本を読んで、というかパラパラと飛ばし読みして、書いてある通りなら、なっても治りやすい扁平上皮癌だし、だいたいもういつ死んでもいい年なので、「長生きするにはたばこを吸おう」という本を書こう、などという冗談にもならない冗談を考えたくらいのことだったのです。
つまり、ぼくにとって喫煙・禁煙はどうでも良いことで、もともと止める気はないし、まあ医者がやめろと言っても、そんなこと言うぼくの知ってる医者はいないだろうなどと思っていたのです。
ところが、この武田先生の説明を聞いて、ことは冗談では済まない、極めて重大な状況だ、日本の医療の大問題だと思ったのです。
禁煙運動は間違ってると言って、そこを論点にしていては、問題の解決にならないのではないか。少女連続殺人の犯行の容疑者が果たして、真犯人かどうかを突き詰めるよりも、別の真犯人を捜すことに捜査の中心を移すべきだと言えるのではないでしょうか。
いってみれば、容疑者が逮捕されてるのに、次々と殺人は起こってるとも言えるのですから・・・・。