イタリアのシガー、トスカーノ
このトスカーノという葉巻はあまり知られていないようです。
アメリカがキューバとの関係を緩和して、ハバナシガーにも何らかの影響があるのかなと想像していたのです。しかしあまり関係はなかったようです。ただ、何だか最近ハバナシガーの作りがけっこう雑になってきたように感じています。
トスカーノは、いわゆるドライタイプのシガーで、フューミドールなどに入れて変に湿気さすと、本来の深い味わいが失せるようです。
他にない特徴は、固く巻いたその形状にもあり、真ん中が太く両端が細くなった両切りの形をしています。真ん中で二つにカットして喫します。一本が二本になるというのはなんだか嬉しい。
このイタリアシガーのトスカーノは、大変古くからあったようです。
例えば、有名なヴィスコンティが監督した映画『山猫』では、主演のバート・ランカスターがこの葉巻を吸っています。
この映画は1963年に公開され、カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞しています。3時間にも及ぶ長尺ものなので、通しで見るのは大変ではあるのですが・・・。
ぼくの勝手な解釈なのですが、フランス人に比べて、イタリア人は葉巻があまり好きではないようです。フレンチ・レストランでは、今はそうでもなくなったのですが、デザート・コースではワゴンに乗せて各種葉巻が運ばれてくるのが常で、それがハイグレイドの証みたいなところがありました。でもイタリアンではそういうことはなかったように思います。
なんか、フランス人が好むから俺らは嫌いだみたいな感じも受けたものです。イタリアのピエモンテ地方はスロー・フードの発祥の地で食の本場でもあるのに、ワインも同様でフランスに持って行かれた。そう思っているところがあるようです。
美術品にしても、やはりイタリアのものはオリジナルの重厚さがあるし、フランスものはなにかハリボテ感がある。だいたいナポレオンが持って帰ったものが大きな顔をしている。イタリアのフィレンツェやローマの後、パリに行ってそう感じたことがありました。 どこの空港でも葉巻売り場があって、保湿の効いた小部屋に、ハバナ銘柄を主とした各種が並んでいるのが普通です。
ところが、ローマ空港には、そういうものは全くなく、その代わりに、大きな円形のショウウインドウがあって、トスカーナばかりが大々的に置いてありました。そのそれぞれの銘柄の特徴の説明文が添えられていて、そんな葉巻売り場は初めてでした。
数日前、クリント・イーストウッドの『荒野の用心棒』という映画が、確かBS−TBSだったと思うのですが、ありました。「伝説のマカロニ・ウェスタン」なのだそうですが、制作年を調べてみると1964年ということですから、これもけっこう古い。この映画でもイーストウッドがトスカーノを吸っていました。
このイタリアンシガー、日本ではあまりお目にかかりません。ネットで調べると、あるにはあるのですが、それはオリジナーレという銘柄で、結構高いし、値段のわりにあんまり美味しくもない。
ぼくが好きなのは、より安いアンティコという銘柄なのです。
好きなものが手に入らなければ、やめればいいんだ。
この頃の嫌煙風潮にふてくされ気味になっている所為か、そんな風に思っているのです。