憲法を考える(安倍晋三 X 田久保忠衛)2/4

 動画をテキストに起こすのはけっこう大変で、最初の部分1/4だけで終わりにしようと思ったのですが、「私たちより下の世代は、当時のことを少し知っていますが、表面のことしか知りません。シリーズをぜひ続けてください」というFaceBookのコメントも寄せられたこともあって、続けることにしました。
 それにしても、横田めぐみさんを始めとする拉致事件が、この憲法の存在と枠組みによって引きおかされたのだという安倍さんの指摘には、驚かされました。

憲法を考える(2/4)
オープニング八木:大阪の40代の方からは、「過去はどうあれ、合法的に成立した現憲法をいま改正すべきだという理由となり得るのは,現代社会や世界情勢に合わなくなっているという一点だと説明される方が納得します」ですとか、兵庫県の30代の方「憲法を改正するという論拠はそういう時代に合わなくなって来ているという点で、成立過程に問題があるからではないと思います。未来に向けた前向きな議論から憲法改正を論じてほしいと感じます」というようなメールをいろいろ頂いているんですけれども,お二人からも時代に合わなくなって来ているという点も大きな理由の一つとして上げてくださっております。田久保さん、時代に合わなくなって来ているというのを教えて頂けませんか。
憲法前文テロップ田久保さんへ質問田久保:これはねえ、一番いいたいのは憲法前文なんですよ。最初に申し上げねばならないのは、これ日本国民はとあるけど、これ文章は他の国の名前を出しても通用する、無国籍なんですねえ。文章これ,日本文としてもおかしいけど,日本の歴史、伝統,文化、こういうものが前文になくて、日本国憲法をこれ、論じられるのかどうか,これが非常に不思議なのと、具体的に申しますと,ここんところですねえ、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。これねえ、時代がどうあろうとですねえ,いまのご質問がありましたけれども,これはどう考えてもおかしい。これは敗戦のとき,日本が暴れまくったんで、お前たちだけが平和を守ってれば運命を担保してやるよという文句ではないかと思うんです。

皆さんよくお考えいただければ、これ日本だけが平和を愛好しなくて他の国がみんな平和を愛好してるでしょうか,ロシアはこれいま何をやってるか,北方領土に対してどういうことをやっているか、はっきり言いますと北朝鮮は拉致者をあっちに持っていかれちゃってるじゃないか,被害者を。それから竹島の問題、話し合いをしようとお願いしても駄目じゃないか、それに中国、中国はねえ,尖閣諸島だけじゃなくて,実は東シナ海で韓国ともやってるし、摩擦を起こしてる、こういう国際情勢なんですよ。その中で,日本だけが平和でなくて,他の国が平和だといわれてもですね,ちょっと待ってくれよ、平和を望んでるのは我々だけで周辺諸国はそうじゃないんじゃないか,この憲法の前文自体がいまの文句だけで全くナンセンスになるんではないか、というのが私の考えだと思うんです。
憲法前文全文反町:かつては、憲法の前文に関してですね,世界に誇れる理想を謳い上げたものだとおっしゃる方もおられたんですね。この考えに田久保さんはどう考えられますか。
田久保:それはいまから100年か200年経つとそんなことないかもしれんですね。これはもう皮肉を込めてですけれど,国際政治というもの欧州はEUはいろいろ経済的トラブルがあっても、政治的に安定してるんですよ。それは主権の一部を譲りながら共通通貨というのが出来た、全くの主権のし合いがアジアなんですよ。これはね,大西洋と地中海は平和な海、インド洋と太平洋は荒海、荒い状態になって来てしまった、とこうゆうことなんですよね。
こうゆう所でいまから100年か500年か先の理想を言っていいんだろうか。ということですね。
八木:安倍さん。
前文安倍安倍:わたくしはですね。さっきのご意見なんだけれど、制作過程がどうでもいいというのは間違ってますね。これはやっぱり戦後67年、ずっとマインドコントロールされるとそうなるのかなと。私にいわせれば悪いんです,精神的堕落ですよ。しかしまあ過去の成立過程だけが問題であると言ってる訳ではなくて現在も問題ですね。そもそもこの前文がね,理想とか言ったって明らかにこれ訳文でしょう。
反町:はい。
安倍:急いで訳したんです。徹夜で訳したんです。諸国民の公正と信義に信頼してって、これ日本語ですか、そもそもね。われらの安全と生存を保持しようと決意した。普通の国の憲法には,私たち国民の命は断固として守る、領土領海は断固として守るという決意が書いてあるものですよ。
これはねえ。お任せしますと言ってるんですよ。政府私たちには責任はありませんね,はっきり言えば。国民の生命や財産、国土領海それはもう任せるんですから。
安全保障、関係ありませんね。外交努力もいらないでしょう。なぜならば、世界の国々はみんな平和を愛してるんだから。これどう読んだってそうでしょう。任せて保持しようと決意した。ということが書いてある訳ですよ。この次がですね,いじましいじゃありませんか。
反町:はい。
憲法前文安倍:「われらは、平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において,名誉ある地位を占めたいと思う」
われらが、われらは、われらが平和を維持しというのとは違うんです。「われら」はね、名誉ある地位を占めたいと思うにかかるんです。
反町、八木:ふうん。
安倍:平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めているのは誰か、平和を愛する諸国民なんですよ。自分たちじゃないんですね。この、皆さんに褒めてもらいたい、いじましいね、ことが書いてある。つまりこれは、占領軍が代って代筆をした敗戦国のわび証文になっていると思うんですが,そこでね,憲法であっても公務員はみんな遵守義務を持っていますよ。
反町:なるほど。
安倍:私が大学を卒業したのが,1977年ですけれども、この年が戦後体制の矛盾点が明らかになった年だと思うんですが、この年のね、反町さんおそらく覚えておられると思うんですが、9月にダッカにおいて日航機がハイジャックされましたね。
反町:人命は・・・。
安倍:赤軍派がハイジャックをした。彼らの要求は,殺人犯をも含む服役囚の釈放と身代金ですよ。要求に応えなければ人質を一人一人殺してゆくと日本政府を脅した。
当時の日本政府は,その要求に応えて超法規的に服役囚を釈放した。国際社会は日本を非難しましたね。テロリストに屈して,のみならずテロリストを野に放った、とんでもない。いまから時の政府を非難するのは簡単なんですけれども、もし例えば私たちがですね、どちらかが総理大臣であったとしますね。
反町:はい。
安倍:では他に道があったか、選択肢があったかということなんですが、例えば自衛隊や警察を派遣して救出作戦をやらせようにも憲法に抵触しますよね。だって、そもそも平和と正義を愛する諸国民の公正と信義に信頼してるんですから、私たちはなんにもやらなくていいと書いてあるんですから・・。
反町:なるほど。
安倍:これは出来ない。だからその為の法律も作っていないんですよ。能力もない。であるならば、せいぜい「人命は地球より重し」とうそぶくよりなかったと私は思いますよ。しかし、皮肉なことにこの一ヶ月後の10月に西ドイツのルフトハンザ機がTFLPによってハイジャックされました。で、ソマリアに持っていかれた。彼らの要求は、やはり同じような要求をした。当時の社民党政権、西ドイツの左派政権、彼らはGSG9という特殊部隊を送って、テロリストを全員射殺をして、そして人質を救出しました。世界は賞賛しました。しかしなにが違ったか。日本と随分違うと日本は批判されました。
なにが違ったか。同じ敗戦国でありながら、西ドイツは憲法を改正していてそれを可能にした。日本はしていなかったんですよ。
反町:ふうん。
安倍:いま申し上げた、この赤軍派がハイジャックした月ですね、1977年の9月に鹿児島の久米裕さんという方が北朝鮮によって拉致された。
反町:はい、はい。
キムセホ国際手配安倍:実行犯は逮捕した。そして警察は、逮捕した実行犯を尋問して、アジトに乗り込んで文書を押収して暗号を解読して、キムセホという人物が主犯だということが分かった。そして、やったのは北朝鮮のいわば工作機関がやったことが分かったんですよ。でもしかし、当時の当局は躊躇するんですよ。平和を愛する諸国民の北朝鮮と事を構えることを避けたんですね。
反町:うん。
安倍:結果、実行犯を釈放しちゃったんですよ。
反町、八木:ふうーん。
安倍:キムセホに関しては、私は官邸に入ってやっと国際手配しました。で、これはいわば、安全保障外交メッセージですから。北朝鮮はもしかしたらばれるかもしれない、ばれたのかもしれない。びっくりした、日本は指一本触れないじゃないですか。これは拉致作戦を続けていってもいいと彼らは考えたんですよ。
反町:うん。
安倍:二ヶ月後、11月、なにが起こったか。
反町:うん。
安倍:新潟の海岸から横田めぐみさんが拉致をされたんですよ。もしあのとき10月にですね。
反町:はい。
安倍:久米さんを日本に戻しなさい。キムセホを日本によこせ。送還せよと要求していれば、厳しく北朝鮮を非難をしていれば、横田めぐみさんはいまでも日本で幸せに暮らしているんですよ。
反町:ふうん。
安倍:この憲法この枠組みがね、13歳の少女の人生すら守れなかったと、この現実に私たちは向き合うべきだろうと思います。
八木:その一つ一つのものに対する向き合い方の姿勢がここから生まれているという所ですね。
田久保忠衛田久保:いま安倍さんがいわれた通り、あれは我々の安全保障を他の国に預けちゃったんですよ。あの前文の通りとすると、日本と対極に立つ国がね、イスラエルだと思うんです。イスラエルのネタニアフいまの首相ですけれども、去年の5月アメリカに行きましてね、上下両院の全員のアメリカの政治家全員の前で、大演説をぶつんですよ。
50分の演説の中で、二十数回スタンディング・オベーション、みんな全員が立ち上がった。その中でね、アメリカ人が震え上がるほど喜んだ、喜んだというか興奮したのはこういうことなんですよ。
イスラエルはアメリカに建国を手伝ってもらう必要はない。我々は自力で建国した。アメリカはイスラエルにデモクラシーを輸出する必要はない。我々はデモクラシーを持っている。アメリカはイスラエルを援助する為に軍隊を送ってくれる必要もない。我々は自前の軍隊を持っている。我々が欲しいのは自国を守る為の手段の一つである経済援助を増やしてくれ。このねえ、自主独立の演説に全員が立ち上がって、しばし拍手が鳴り止まなかったと、こうゆうんですよ。
これは私はね、日本がこうなれと言っているんじゃなくて、あまりにも日本の戦後のていたらくはイスラエルの対極にあるような立場で、そのシンボルはこの前文じゃないんですかと、いうことをぼくは言いたかった。