この訳の分からん憲法学者ー小林 節

Kobayashi たしか憲法96条の改正が問題になっていた頃だったから、昨年の秋頃だったと思います。大阪の竹田研究会で、登壇した竹田恒泰さんが開口一番、唐突に「小林先生はわたしの恩師でもあり、私の味方です」とおっしゃった。でも、このフレーズだけで、後に続く説明はなかったのです。
 話の裏を読みたいというあまり人のよくない悪い癖のあるぼくは、あれっこれどういう意味なのだろうと考えたんです。竹田先生が96条改正に反対なのはよく分かる。憲法改正の条件を低くする96条改正は、天皇条項を変えられる危険性を孕んでいるからなのだとぼくは思っていました。
 それがGHQの稚拙な作文であるにせよ、昭和憲法は天皇条項に限っていえば、帝国憲法を現代的にアレンジしていて何の問題もないと思えるのです。それが変えられる危険性があることは断固拒否しなければいけない、竹田先生はそう考えていらっしゃるのだとぼくは考えていました。

 そんなわけで、小林節という慶応大学の憲法学の法学部教授(すでに今年度で定年退職)に関心を持ったわけで、すぐにWikipediaで調べました。もともと改憲派だったのだけれど、娘が生まれて9条改正に反対することにしたと書いてありました。この人ちょっと変、とその時思いました。だって憲法学者がそんな私的なことで考えを変えるべきではないと思ったからです。しばらくしたらこの記述は消えてなくなっており、怪訝さと少々の不信感が生まれたといえます。

朝まで生テレビ

朝まで生テレビ

 そんないきさつで、小林節先生については、主にインターネットで情報を漁るようになりました。
 昨夜の朝生の出演者の中に小林先生を見いだしました。同じ並びにあの孫崎享氏、共産党の小池晃議員、民主党のあの辻元清美議員などが連なっておられました。
 朝生のテーマは、「激論!集団的自衛権で日本は戦争に巻き込まれるか?!」というものでした。

長谷川幸洋東京新聞論説副主幹"

長谷川幸洋東京新聞論説副主幹”

 なんの話だったか忘れたのですが、出演者の東京新聞の長谷川幸洋氏と小林先生の意見が対立し、議論になりました。その時、小林先生が「あなた、勉強してください。もっと勉強してください」と繰り返しいいました。長谷川氏は、少し険しい顔になって言い返し始めたところで、例によってコマーシャル、となりました。
 放送再開して、長谷川氏は整然と反論しました。「確かにあなたは専門家です。私は素人です。でも、私はその素人の立場で判断して意見を言うというジャーナリストなんです。」
 この「勉強しなさい」という台詞は、前にも何度か聞いた覚えがありました。今回の孫崎さんは、勝手にしゃべらせておこうという感じで、あまり誰も相手にしなかったから、あの台詞を言う機会がなかったようなのですが、彼もよく言ったし、鳩山さんも言いました。やっぱり一言もの申そう、この際。ぼくはそう思いました。
 竹田先生の恩師であるということで、少々の逡巡もあって、いままでずっと控えていた小林先生について書こうと、いま思い定めた次第です。

初代 アメリカ合衆国大統領

初代 アメリカ合衆国大統領

 ところで、皆さんは「ワシントンと桜の木」の話をご存知でしょう。アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンの逸話です。
 アメリカ合衆国の初代大統領、ジョージ・ワシントン(1732~1799)は少年時代、父親が大事にしていた桜の木を斧で切ってしまったのですが、正直に「僕がやりました」と告白。逆にその正直さに父親も「お前の正直な答えは千本の桜の木より値打ちがある」とほめたという話です。
 しかしこの話、大嘘であることは周知の事実となっています。なにせその時には、アメリカには桜の木はなくて、桜が持ち込まれたのは、ずっと後のことなのだそうです。初代大統領の逸話が捏造であり、ウソをつかなかったというウソの美談の捏造というのは傑作ジョークであり、アメリカの歴史の捏造を示唆する証であるとも言えます。

 ワシントンに関しては、「桜の木」だけではなく、立派な大統領と言う話とは裏腹のひどい実話が数多くあるようです。彼は、奴隷制に否定的な態度を示しつつ、実際は100人の奴隷の所有者でした。またアメリカ・インディアンに対しては徹底的な絶滅方針を持っていました。
 1775年、彼はこんなことを言っています。「姿こそ違えど、インディアンは狼と同様の猛獣である。」
 ワシントンの軍隊は、ブーツトップやレギンスを作るために、イロコイ族の尻の皮を剥いだ。ワシントンによる虐殺を生き延びたインディアンたちは、ワシントンを「町の破壊者 (Town Destroyer)」と呼んだのだそうです。
 1792年に、ワシントンについてイロコイ族の一人が次のような言葉を残しています。「今では、ワシントンの名を聞いただけで、我々の女たちは後じさりし、顔色が悪くなる。そして、我々の子供たちは母親の首にしがみつく。」

 話を戻して、小林節教授は、2013年06月17
日本記者クラブでの講演
を行いました。これはYouTubeで今も見ることが出来ます。この講演の冒頭にワシントンが出てくるのです。少し長くなりますが、冒頭の部分のみを文字おこししてみます。
 大学教授でありますから物書きでありまして、ここに呼んで頂けるのは夢のような気持ちでございます。
改憲派からいわせると偽改憲、実は護憲派ではないか、また改憲派(護憲派の言い間違い)からいわせると憲法9条の改正を頑強に主張していますからこれは改憲派ではないか、あるいは軍国主義者とじかに呼ばれたこともある。

 昔から自分のことを護憲的改憲派と規定。日本國憲法いいものだけれど古くなったからモデルチェンジしたらどうですかとアメリカ的にいえば当たり前のことを言っている。ただ、日本では居場所がなくて三十数年孤独を楽しんで参りました。
今年神奈川新聞が護憲派・改憲派・護憲的改憲派という三つのインタビューを並べて、ようやく私に居場所を与えてくださった。

 若い頃住んでいたところが、ボストン郊外だったので、独立戦争の戦績が多くあった。
公立図書館で独立戦争に関する文献を読んだ。素晴らしいことを発見した。私はジョージ・ワシントンというアメリカの初代大統領を尊敬して止まない。
世界の最初の成文憲法は1976年の「アメリカの独立宣言」である。文書で権力を縛るというのはそれ以前にはなかった。
ジョージ・ワシントンは王になろうとはせずに入れ札で決める大統領制を選んだ。
二期で止めることによって長期政権の弊害を避ける先例を遺した。
本当に心からジョージワシントンを尊敬しています。


 これを聞いて、ぼくが思ったことは、日本のことをほとんど知らないままアメリカに行って、変に洗脳された変な憲法学者だなと、いささかの嫌悪感を感じたものでした。最初から「呼んで頂いて夢のような気持ち」などというオーバーな表現は、やはり気色悪い。
 ジョージ・ワシントンを「尊敬して止まない」とか、「本当に心から尊敬している」などと、単純な表現に違和感を感じたし、一つの文献を盲目的に信じ込む姿勢に学者らしからぬ浅薄さを感じてしまったといっていい。
 調べてみると、地方紙で色々と意見を述べておいでです。
 米国の占領下で作らされた押しつけ憲法だから、われわれが独自に作った明治憲法に戻れ、というのが安倍政権の主張の柱。だが明治憲法下では国民は天皇の臣民であり、決定権も人権もなかった。そんな憲法だからこそ、あんな戦争ができた(神奈川新聞)
 これはまた、あまりに単純な、憲法学者とも思えぬ表現。このひと、帝国憲法をちゃんと調べたのだろうか、と思いました。
 
 彼は民主党の大シンパだったようで、こんなことを語っていました。
小林 民主党のマニフェストにあったこの憲法観については、点数でいくと私は100点満点だと思います。
長いこと自民党による憲法をないがしろにした、いわば悪政の時代に一番無視されていたのが「憲法は主権者・国民が権力を託した人々を管理するための規範」であるということ。憲法は、「主権者国民と政治家の間の最高度の約束である」という、これまで一番忘れられていたことについて、民主党の枝野幸男さんや園田康博さんらが中心になって、憲法調査特別委員会においては、意識的に主張していました。それがこのマニフェストには、きちんと書かれています。「民主、人権、平和」という日本国憲法の三大原則を否定するのが、旧来の改憲・改悪派ですから、それに対して正しいことを簡潔にうたっている。
編集部 立憲主義を正しく理解している鳩山さんが、まさに今、私たちの国の首相だということは、とてもいい状況なんですね。
小林 そうですよ。小泉とか安倍とか麻生とか、鳩山とは真反対のおばかで悪人が続いた後に、真っ当な立憲主義を理解している鳩山内閣が立ったんですよ。喜ぶべきことなんです。

 ワシントンに心酔していると語る小林先生は我が国・日本についではどう考えておられるのだろうかと気になりました。2001年03月07日(水)参院憲法審査会に呼ばれた慶大教授小林節は、天皇制の在り方について「天皇制の問題は未解決。誤解を恐れずに言えば、廃止も含めて議論すべきだ」と述べた。
 彼の考えでは、皇室制度は国民の総意によって支えられているのだから、総意によって廃止できるという考えのように思えます。日本の国体についての見識の欠如ではないですか。さすがに民主党シンパだけのことはあると思ったのです。
 ぼくにいわすれば、皇室制度こそ日本国の根幹であり、それがなくなるということは日本の国が消滅するに等しいと思えるのです。「天皇制」という用語は、共産党が打倒の対象として名付けた名前で、忌避すべきです。正しく「皇室制度」と呼ぶべきです。

 2013年06月08日の
神戸市中央区神戸市勤労会館での講演では次のように語りました。
 立憲民主主義については、「民主主義の第一原則は多数決だが、『多数』は狂うことがある。ファシズムは、民主主義が引き起こしたもの」とし、「頭に血が上った多数がおかしなことをしたときに、『数』ではなく、『価値』によって、少数が多数を思いとどまらせ、反省させるのも民主主義だ。すなわち、立憲民主主義には、『少数決』がありうるのだ」と述べた。
 現行憲法に対し、「アメリカの押し付けだから、日本人の手で変えるべき」という主張があることについては、「明治憲法は、あの馬鹿な戦争を食い止められない仕組みだった。日本国憲法が、仮に押し付けられた憲法だったとしても、当時の国民が深く納得して受け入れたのだから、それでいいではないか」とし、さらに、「現行憲法は国民に根付いている。天皇主権より国民主権のほうがいいに決まっている。この国のことを、なぜ一人の『おじさん』が決めるのか。天皇というオーナーが、『全株』を持って国を仕切っているような仕組みはおかしい。国民一人一人が『株主』であるほうが正しい組織だ」と力説した。
 正直驚きました。天皇陛下は「おじさん」なのか。国民一人一人は株主なのか。国家は会社組織なのか。やっぱりこの人おかしい。というより、極端にいえば少々狂っている。そう思いました。

 2011年09月13日に行われた「一水会フォーラム」における小林節慶応義塾大学教授の講演内容は次の通り。
 
今の『憲法』ではリーダーシップが生まれるのは困難。地方分権を美化しているが、江戸時代は三百諸侯が国を作ったのではない。天皇を中心に統一した国。
 憲法上根拠のない地方主権は見直すべし。海は一番簡単な渡り廊下になった。私は議院内閣制ではリーダーシップが生まれないと批判しただけ。大統領制には反対。首相公選制も反対。全国で一人を選ぶとカリスマ性が生まれるので、天皇制と矛盾する。日本を束ねるには、天皇制が向いている。青島・ノックのような変な芸能人が大統領になる可能性がある。元首は天皇。党首が替わったら必ず総選挙をするのが良い。
 とまあ、けっこうてんでんばらばら訳の分からん見解を述べておられます。声から文字起こしされた物ではないのでまとめる時の過誤があるのかも知れないのですが、大体大昔から維持されてきた権威と権力の違いすら認識の外のような見解です。やはり天皇に関する認識を欠いておられるようです。
 また「江戸時代は三百諸侯が国を作ったのではない。天皇を中心に統一した国」などという、訳の分からんことをおっしゃる。江戸時代に国家意識などありません。天皇を中心にした国家が成立したのは明治維新であり、学者とも思えぬ見解。
 一水会という右翼団体を意識したのか、ここでは、皇室制度を支持しているかに見えます。なんだか、バラバラと言う感じもしてしまいます。あるいはこの先生サービス精神に富んでおられるのか。

 人間その考えはいろいろ変化変遷はする物だと思います。しかし、学者であり言論人であれば、考えが変わったならば、はっきりそれを表明しなければいけない。間違いがあればしっかり弁明なり弁解をしないといけないと思うのです。
 集団的自衛権に対する小林先生の見解は次のような物です。(大阪日日新聞 2013/10/22)
 集団的自衛権の解禁とは、世界の常識に照らせば、同盟国の米国に付き合って、英国と同様に、世界のどこへでも戦争をしに行く自由を宣言することに他ならない。これは、要するに、わが国が世界の警察の一員になり、地球上で、勧善懲悪の活動に参加して「積極的」に世界平和を形成していくことである。
 しかし、あの敗戦の結果として現行の憲法9条を頂いているわが国に、そもそもそのような活動が憲法上、許されているのか? がまず問われるべきではなかろうか。
 朝生での考えもこれと変わるところはなかったようです。最初の頃の「勉強しなさい」発言で、強烈ケッチンを食らった後は言葉少なかったようですが。

朝生では、最後に電話アンケートの集計結果が示された。
集団的自衛権に賛成

集団的自衛権に賛成


集団的自衛権に反対

集団的自衛権に反対


まず、賛成・・・53%、反対・・・47%と言う結果だった。
 特徴的だったのは、反対意見の理由として、「戦争に巻き込まれる」が85件と異常に多かったこと。
 これはどうやら、イラク戦争やアフガン戦争のような戦争に参加させられるという危惧ではないかと思われます。しかし、これは集団的自衛権と集団安全保障を混同していると思われます。
 この混同は小林先生の見解にも見られます。
 たとえばNATOは集団安全保障であって、集団的自衛権ではない。
 それにしても、戦争するのはいや、死ぬのは怖い、だからつねに戦争が起こらないような選択をするというのでは、侵略から国土を守ることは出来ないでしょう。戦争になったら逃げるという古市くんみたいな人間ばかりになったら、日本は独立を保てないのではないかと心配になってしまうのです。

NHKの悪巧みの映像。 「集団的自衛権を使えるようにすべきかというアンケートの結果です」というアナウンスと一緒にこの映像が示される。

悪巧みの映像。
「集団的自衛権を使えるようにすべきかというアンケートの結果です」というアナウンスと一緒にこの映像が示される。

 急に思い出して、一つ写真を追加したいと思います。
 多分これ1・2ヶ月前のはNHKニュースの画面だったと思うのですが、いかにもNHKらしいやり方だと、むかつきながら感心し、録りおいた物です。
 「同盟関係にあるアメリカなどが武力攻撃を受け日本の安全も脅かされる際に一緒に反撃する集団的自衛権を使えるようにすべきか」というアンケートの結果の表示です。
 これを見たら、誰でも、すべきでないと思ってる人が多いんだなぁ、そう思ってしまうでしょう。絵はすぐに消えます。
 ぼくは、あれえっと思って、ビデオを巻き戻し、停止させましたから分かったのですが、普通では確認できません。
 実際のところ、ビデオレコーダを持っていて、テレビを録画してから見たり、後追い再生で見ている人は、極めて少ない。ほとんどの人は、見流し・見過ごし、そして一種のサブリミナル効果のような刷り込みが行われるといっていい。恐ろしいことだと思います。
 単純に「間違いでした」では済まされない、悪意に満ちた巧妙な作為を感じてしまうのはぼくだけでしょうか。