元徴用工(募集工)裁判に関して〜日韓関係を悪化させる日本人たち〜

 もうだいぶ前からこの人の番組は見ないことにしていたのだが、久方ぶりに録画ボタンを押した。
 「池上彰そうだったのか日韓関係徹底解説SPなぜここまでもめる?なぜここまで反日に?」という番組だった。じっくり見たのだが、やっぱり池上彰だなという感じであった。
 この人、変な歪曲もしないし、嘘も言わない。ただ、あげるべき事実をすっ飛ばしてしてしまうのだ。対象が日本から離れた、他国の問題の場合にはそれはあまり大きな問題ではない。
 しかし、チャイナや韓国などの近隣諸国と日本とに関わる問題となると、そうはいかない。
 事実は事実として並べるのはいいのだが、それに関連する色々な事実がある。これらを全て並べて判断する必要がある。これら多くの事実にはそれそれの国にとって有利なものと不利なものがある。
 これらを全て取り上げるわけにはいかないのはわかるが、その取捨選択に問題があって、そして詰まる所、結局どっちもどっちという結論が導き出されるような流れになる。

 今回の日韓関係悪化の原因は再三再四にわたる韓国の常軌を逸したと思える行動にあるのですが、そのスタートは平成30年(2018)10月30日、韓国大法院(日本の最高裁)が下した判決にあります。
 大法院は4人の元「徴用工(実際は募集工)」の求めに応じて新日鉄住金に一人4000万円賠償金の支払いを命じる判決を下したのです。
 賠償金の請求は、1965年に両国が交わした日韓請求権協定に依って、決着しているはずでした。

 日本政府をはじめ、多くの人がとんでもないと思いました。ところが、反日の日本人は、賠償金は決着しているが、個人は別だと唱えたのです。この判決擁護論は、左派弁護士や共産党が言っています。しかし彼らは、共産党でさえ判決文をしっかりとは読んでいないと思われます。
 判決は次のように言っています。
 <まず本件で、問題となる損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島の不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする「強制労働慰謝料請求権」である点を明確にしておかなければならない。原告たちは被告を相手に未支給賃金や補償金を要求しているのではなく、上記のような慰謝料を請求しているのである。>

併合条約証書。日韓両国では、韓国併合について合法・不法論が戦わされるが、国際法上からは「不法なものではなかった」というのが定説となっており、韓国側が不法論の根拠の一つにしている強制性の問題についても、「当時としては問題になるものではない」とされる。

 この判決の原点には「日本統治不法論」があります。この裁判は日本では全て原告敗訴になっていました。これを大法院は次のように否定したのです。
 <日本判決が日本の朝鮮半島と朝鮮人に対する植民地支配が合法的であるという規範的認識を前提に日帝の「国家総動員法」と「国民徴用令」を朝鮮半島と原告1と原告2に適用することが有効であると評価した以上、このような判決理由が盛り込まれている本件の日本判決をそのまま承認することは大韓民国の善良な風俗や、その他の社会秩序に違反するものであり、従って我が国で本件の日本判決を承認して、その効力を認定することはできないと判断した。>

 大法院は、原告の要求を退けた日本の判決は公序良俗に反するとし、人道的立場から慰謝料を支払えと言ったのです。
 多くのマスコミが理解していませんが、大法院判決は1965年の請求権協定を肯定した上で、そもそも日韓併合が不法だったのだがら、賃金が払われその労働条件に何の問題もなかったとしても、働かせたこと自体が不法でそれに対して慰謝料を支払えと言っているのです。
 この理屈で行くと、日本語を学ばせたこと、神社に詣でさせたこと、日本語名を取らせたことなど、全てが慰謝料の対象になり得ます。
 おまけに慰謝料請求権は世襲が可能で、日本は子々孫々慰謝料請求を受け続けることになるのです。そうなった時、共産党はどう責任を取るのでしょうか。

1965年の「日韓請求権協定」締結時、この「日本統治不法論」を日本政府は認めていませんでした。韓国は不法だったといい日本は合法とする。しかし、そう言い合っていては国交は結べません。
 そこで、「アグリー・トゥー・ディスアグリー」の原則に基づいて条約を結ぶことにしました。これは、外交の一つの方法で、不合意であることを互いに同意すると言うものです。そして、長年続いてきたこの論争を、1965年をもってそれ以前の条約・条例は全て無効であるということで合意したのです。
 日本は「もはや無効」であると表現しました。この(Null and Void)を、日本は現在に至るまで合法であると解釈したのですが、韓国はそれまでずっと不法であったと解釈したと言えます。そして、日本は3億ドルの供与を行うことにしたわけです。
 これはいわば、両国の先人の知恵とも言うべきものだったのですが、大法院の判決は、それを反故にするものだったわけです。

和田春樹氏。日本人拉致事件は根拠がないと言い続けていたが、北朝鮮自身が拉致をみとめた。その結果「岩波書店や東大の権威失墜にも相当貢献した」とされ、「朝鮮問題という日本と朝鮮半島にとってきわめて重要な分野において、和田の存在価値はすでに大暴落」することになったが、一向めげることなく、82才になった今も頑張っている。

 和田春樹という日本人がいます。この日本の国体を破壊したいと願うとんでもない人は、ずっと歴史学の東大教授で、作家の大江健三郎などと共に「日本統治不法論」を40年近くも唱え続けてきました。
 2010年、彼は発起人となって、「韓国併合」100年日韓知識人共同声明なるものを発表し、大々的に宣伝して日本と韓国の知識人の署名を集めました。
 日本では、大江健三郎、姜尚中、佐高信ら学者、文化人など、なんと540名の署名を集めたのです。韓国では500名でした。
 この時署名した日本人の名簿を<高田直樹ドットコム>の<資料>に載せました。
 2010年・日韓知識人共同声明日本側署名者540人 *印は発起人

 この名簿は、西岡力著『でっちあげの徴用工問題』の巻末付録からの転載です。西岡氏の了解は取っていないのですが、ネットの番組で転載してもらっていいと話しておられたので、無断で転載させていただきました。
 西岡氏は、この540人には日韓関係を悪化させた責任があると書いておられます。
 話は少し戻るのですが、和田春樹は大江健三郎などと共に、1984年全斗煥大統領訪日時に国会で謝罪決議を行うよう署名運動を行いました。こうした運動に乗って当時の社会党が村山政権樹立の条件として、1995年に戦後50年の国会謝罪決議を行うことを要求しました。しかし自民党保守派の反対で頓挫したため、村山首相がその代わりに行ったのが、「村山談話」なのだといいます。
 しかし、そこにも和田春樹が目指した「日本統治不法論」はありませんでした。

 この共同声明は、日本ではほとんど取り上げられませんでしたが、韓国では大々的に報道されました。その結果、併合100周年に当たって日本政府が談話を出すこと、そこでは日本が韓国の歴史認識に合わせるべきだという流れが出来上がりました。
 そうした流れの中で、菅首相は「日韓併合100周年談話」を出します。そこにはこうあります。

 <私は、歴史に対して誠実に向き合いたいと思います。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思います。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることはできないのです。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここにあらためて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします。>
 今の日本人なら、ほとんどの人はこんな言い方をしたらダメだと思うのではないでしょうか。
 
 案の定、「強制併合条約」の不法性、慰安婦の強制動員へ言及がないと難癖をつけてきました。
 100周年とはいえ、併合は1945年に終わったのですから、それから65年が過ぎています。1965年の「日韓基本条約」「日韓請求権協定」から45年も経っています。そんな時にこんな談話を出すことは、あんまりまともではない。
 そして、この2年後に、韓国大法院は下級審ですべて敗訴していた朝鮮人戦時労働者への賠償支払いを認める逆転差し戻し判決を下しました。
 この判決の骨子は、日本統治不法論で、それは和田氏らが進める運動が後押ししたことは間違い無いと思われるのです。

 平成30年、韓国大法院が下したとんでもないとも思える判決とそれに対してなんの対応もしない文政権に我が国政府は冷静に対応しました。それに続くレーザー照射、天皇陛下への謝罪要求などにも、受けて立つということはしませんでした。韓国の論点ずらしと嘘の上塗りにも冷静に毅然と対応したと言えます。
 そして、日本国民が韓国の異常さを認めざるを得なくなるまでの時間を経てから、対抗処置ではないという理由づけが可能である対抗処置を取ったと言えるでしょう。
 こんな対応をした日本の政権は未だありませんでした。まことに見事と言わざるを得ません。

 あまり知られていないようですが、韓国は日本のメガバンクの保証がなければ、一切の外国との商売ができない。だって、ウオンで取引する国など地球上にはないのですから。こんなことを言ってはいけないのかもしれないのですが、全く身の程知らずの国とも言えるのです。
 そうしたことが分かった上で、日本政府はあらゆる分野に存在する韓国擁護勢力に惑わされることなく、あのまともでない国が、併合不法論を言わなくなるまで、現在の対応を、政権が変わろうとも、みじんも変えることなく持続する必要がある。日本国民はこの点を確認する必要があると思うのです。

(付記:この項は、西岡力著『でっちあげの徴用工問題』や「Wikipedia」を参考にしています)

元徴用工(募集工)裁判に関して〜日韓関係を悪化させる日本人たち〜」への2件のフィードバック

  1. 高田先生!
    直球、ど真ん中の正論を書いてくださり、有難うございます。
     私は昭和52~54年高校山岳部員でした。ヤマケイを買うと真っ先に読むのはもちろん「なんで山登るねん」。
    あれから40年を経て、先生のブログに出会えて、感激しております。

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