先頃より、サイバー攻撃が話題となっています。
実際には、話題になるというような悠長な話ではなく、とてつもなく大変な状況だと知るべきだと思うのです。
アメリカは的確に反応し、「サイバー攻撃は新しい戦争の形」としました。
<米国では、軍のコンピューターシステムがハッカーに侵入されたほか、送電網を管理するコンピューターシステムが繰り返し侵入を受け、米国防総省は、原発や交通機関などの混乱を狙った外国からのサイバー攻撃を「戦争行為」ととらえることが可能と結論付けることとなった。>
現在の航空システムや軍用機などは、すべてインターネットを使っており、これがサイバー攻撃を受けると、とんでもない危機にさらされることになります。
世間では、そういう悪いことをする輩をハッカーと呼んでいるようです。しかし、ハッカーとは、もともとそういう意味ではありませんでした。コンピューターにおいて、極めて高い技能を有する人への尊敬を込めた言い方だった。(<高田直樹ウェブサイトへようこそ>の『パソコンおりおり草』にまもなく載る第20話「ここはハッカーの街だよ」を読んで下さい)
高い技能を悪事に用いる奴らは、クラッカーと呼ばれていました。しかし、あまりコンピューターのことが分からないマスコミ連中の誤用が原因で、そういう一般認識を生んでしまったようです。
では、わる方のハッカーではない、ええ方のハッカーはなんというのか。それはホワイトハットと呼ばれるのだそうです。
でも、なんでホワイトハットなのか。
10年以上も前、Linux(リナックスあるいはライナックス)とよばれるオープンソースのOSが世に広まりました。現在では、インターネットのサーバーOSなどとして、ひろく使われています。
これは、ヘルシンキ大学の大学院生だったリーナス・トルバルド氏が、自分のパソコン用にUNIXーOSの心臓部を移植し、1991年に公開しました。以後世界中のプログラマーがオンラインで連絡を取り合いながら、共同開発を行ったのです。
その経緯はWikipediaと似ていると言えるでしょう。
このライナックスの商用ソフトとしてRedHatというOSがありました。ぼくも結構長い間使っていました。多分このレッドハットからの連想で、ホワイトハットの呼称が生まれたのでないか。これはぼくの勝手な想像に過ぎないのですが。
もともと、コンピューター・ソフトウェアの発達の過程で、オープンソースという概念が生まれました。それは、コンピューターがもたらす利益恩恵を万人のものとしようという、ボランティア精神に基づいたものだったと思います。オープンソースの定義はちょっと長々しいですが、次の10箇条になります。
1.自由な再頒布が出来ること。
2.ソースコードを入手できること。
3.派生物が存在でき、派生物に同じライセンスを適用できること。
4.差分情報の配布を認める場合には、同一性の保持を要求してもかまわない。
5.個人やグループを差別しないこと。
6.適用領域に基づいた差別をしないこと。
7.再配布において追加ライセンスを必要としないこと。
8.特定製品に依存しないこと。
9.同じ媒体で配布される他のソフトウェアを制限しないこと。
10.技術的な中立を保っていること。
難しいかも知れませんが、ソースコードが公開されている訳ですから、改善することが可能ですし、それを売ってもかまわない。しかし買った人がそれをコピーするのを妨げてはならない、ということです。
今夜のNHKの「クローズアップ現代」では、<急増するサイバー攻撃ハッカー密着取材>が放映されました。この稿を書く気になったのは、この番組がきっかけなのですが・・・・。
この番組で、公然とサイバー攻撃を肯定する「アノニマス」というハッカー集団が紹介されました。
ぼくが、気にしたのはこのアノニマスという名前でした。anonymousという名前というか言葉には大変馴染みがありました。
フリーソフトウェアの思想を掲げるフリー・ソフトウェア財団という集団が昔からあり、ここが主宰するGNU(グニュー)プロジェクトといいうものがあります。プロジェクトの目標は「フリーでないソフトウェアを全く使わないでも済むように、十分なフリーソフトウェアを開発すること」でした。だから当然GNUのソフトは数多くそれらはすべてフリーで、大変優れたものなのです。また多くのUNIX互換のコマンドがあります。
その一つのFTPコマンドの実行時に用いる実行者名に、このanonymous(匿名の)が普通用いられます。
彼らが、ソニーの独善的な利益の擁護というか囲い込みに義憤を感じ攻撃を仕掛けたのは理解できることでした。
さて、現在の状況に不満を感じる人たちが、サイバー攻撃をしかける。それを防ぐ方法はあるのか。コンピューターの高等教育を受けた優れた技術者であってもかなり無理なのではないかと思います。
かつて、まったく独学でコンピューターを学んだぼくが、科学警察研究所の依頼で作った「認知表検索システム」とか「性犯罪検索システム」などをみて、企業の技術者は、その検索スピードに驚いた訳ですから。
ではどうすればいいのか。ハッカーの協力を得ることです。
むかし、バイクに乗り出した頃、夜中にバイクを走らせ、途中で入った店で話しかけてきた中年のおじさんが、語った話は興味深いものでした。彼は常に白バイに追いかけられていたのですが、常に逃げ切って捕まえられることはなかった。あるとき白バイ隊長がこういったのだそうです。
「君の技術を白バイの隊員に教えてやってくれまいか」
日本も、ハッカーを犯罪者扱いするような視野狭窄状態から脱して、むしろ彼らの技術の伸張を支援し、その技術を取り込むように計らないといけない。
Facebookもgoogleも、刑務所に入ったようなハッカーを使って、その優れたソフトを完成させたといいます。
各国のスパイから楽園などといわれる日本にあって、日本人の隠れた才能技術を取り出しそして取り込むことによって、世界の状況に立ち向かわないといけないのではないか。そう思うのです。