先頃、スティーブ・ジョブスが亡くなって、マックのことをことを書きました。
でも、本当に書きたかったのは、ぼくとマックとの長い関わりのこと。そして、そのもっと前のNECのPC-9801のことでした。
とりあえず、イントロのつもりで「Macを創った人たち」を書きました。
それで、98やらマックのことを思い返していたら、かつて『Oh! PC』というコンピュータ雑誌に<パソコンおりおり草>と題するエッセイを連載していたことを思い出しました。調べると、それは1991年~1992年のことで、まさにひと昔、いやふた昔まえのことだった。
これを[高田直樹ウェブサイトへようこそ]に載せておいたら、好きな箇所を取り込めるし、リンクも張れるではないか。そんなことで始めた<パソコンおりおり草>のデジタル化だったのですが、この28回の連載もようやく終了しました。
昔に比べれば、スキャナーもOCRソフトもえらく進歩していて、デジタル化は比較的簡単でした。しかし活字の組み方が、他の普通の雑誌と違って、縦書きではなく横書きの3列組みになっていました。
大変に改行が多い。この改行を取らないといけないことになります。ひとつの文章に10個も20個もの改行があるわけで、うまい具合に改行コードを取ってくれるエディターはないものかと探しました。
この改行コードですが、簡単に説明しましょう。
まず、文字を表すには、ASCIIコードを使っているのですが、1バイトコードで規定される英数字と2バイトコードで表現されるかなや漢字があります。(バイトって?規定されるって? そういうことは興味ある人は自分で勉強下さい)
それで、改行はどんな仕組みかと言えば、制御コードと呼ばれる文を制御するコードがあって、このコードは文字コードのように目には見えません。ただカーソルを移動させたりする働きがある。
CRと書かれるキャリッジリターンはリターンキーを叩くと書き込まれ、カーソルは行頭にリターンします。と同時にLFと書かれるラインフィードコードも入って、カーソルは一行下に飛びます。これで、改行が完了という訳で、CR+LFと表現したりします。
どうでもいい話を書いたかもしれないのですが、ともかくこの改行コードを取り去る必要があり、これには改行コードとヌル文字を置換すればいい訳です。しかしこれをやってくれるエディターがありません。多機能を売るシェアウェアの秀丸も駄目。
散々探してようやく、xyzzyという変な名前のフリーのエディターを見つけました。
¥nとヌル(空白)の置換モードに入ると、カーソルはどんどん改行コード部分に飛んで行くので、この時Yキーを押すと改行コードを取ってくれ、Nキーを押すとパスして次に移ります。
だから、原文を見ながら、改行があるところまで、トントントンとYキーを叩いて行く訳です。
こんなことをして、けっこう楽しく<パソコンおりおり草>の取り込みを始めた頃、北杜夫氏が亡くなりました。北杜ドクターのことを書かないといけないことになって、マックとぼくの話は後おくりになりました。
それにしても、<パソコンおりおり草>の取り込みをして、気付いたのはコンピューター環境の変化でした。わずか20年ほどの間に驚くべき変化が起きていることに今更のように気づき、その変化の底にあるアメリカの奸計を感じたりして、少々の空恐ろしさを感じたりもしたのです。
<パソコンおりおり草>の取り込みをしていて思い出したのですが、『山渓』の連載には、ほかに<なんで山登らへんの>というのがあったのです。これは単行本にはなっていません。
もともと、『なんで山登るねん』は1970年代の3年間の連載を単行本にしたものでした。『続・なんで山登るねん』は、1979年のラトックⅠ峰に行く為にホテルにこもって1ヶ月で書き下ろしたもの。
ラトックから帰ってきて、「柳の下には泥鰌は3匹いますからぜひ続々を」という依頼だったのですが、もうホテル缶詰はごめんだったので、「ちょっとけったいですが」というタイトルで1981年~1982年の2年間連載することにしたのが、『続々・なんで山登るねん』となりました。
<なんで山登らへんの>は、たしかこの後だいぶ経ってからの連載で、これを「高田直樹ウェブサイト」に載せるかどうかをいま考え中です。まあぼくとしては、「高田直樹ウェブサイトへようこそ」は、ぼくの作品のアーカイブ(デジタル書庫)だと考えているので、この機会にアップしようかとも考えている訳で、読んで頂けるかどうか別にして。
いずれにしろ、これはもう発掘に近い作業であり、なんだか自分のミイラを掘り出しているような、そんな懐かしいような気色悪いような、それでいてうれしくもあるなんともけったいな気分なのです。