映画『ミルク』と『ブンミおじさんの森』を観る

トルコのセミフ・カプランオール監督の『ミルク』を観た。
カプランオールの「ユスフ3部作」として知られる『卵』『ミルク』『蜂蜜』の2番目に創られたものである。
『卵』は壮年期、『ミルク』は青年期、『蜂蜜』幼年期のユスフを描いている。
ユスフの人生を昔へと遡る形で映画が作られたということである。最後の6歳のユスフを描いた『蜂蜜』は、2010年ベルリン映画祭金熊賞受賞を受賞してカプランオールの名は世界に知れ渡ることになったのだろう。
金熊賞といえば、宮崎駿さんが『千と千尋の神隠し』で2002年に受賞している。
ぼくは先頃、なんの予備知識もなく、金熊賞受賞作であることさえ知らず、この『蜂蜜』をみて、自分の幼年期の思い出を呼び起こされたからだと思うのだが、激しく心を揺り動かされ、「映画『蜂蜜』を観る」を書いた。

冒頭のカット。このフレームは2分30秒ものあいだ動かない

『ミルク』は、こんな冒頭のシーンから始まる。
ヒゲの老人が椅子に座り何やら書き付けている。やがて遥遠方に3人の若者と女ひとりが現れたのが、アウトフォーカスながら分かる。
やがて若者たちは近づいてきて、薪を運び去る。この間、男は細かい字を書き続けているのだが、このカットなんと2分30秒ものあいだ微動だにしないのだ。
どんな展開になるのか全く予想もできない。

中央の棒状のものが逆さ吊りにされた女

2分30秒が過ぎてカットが変わり、大木の下の場面となる。焚き火の上の鍋には、湯気を立てるミルクがある。
男たちは木の枝にロープを投げ上げ、鍋の上に娘を逆さ吊りにする。一体何事なのか。

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