ぼくも、その中身については知らなかったし、ただ漠然とアメリカ下院の決議文のようなものだと思っていた。ところが先日の産經新聞の櫻井よしこ氏の記事を読んで驚いた。そこで調べる気になった訳である。
「クマラスワミ報告」はインターネットにも、PDF文書として載っているから誰でも読むことが出来る。
木刀で脅されて連行された少女たちは、性奴隷として虐待・虐殺されたことや、慰安所の状況が聞き取り調査として詳述されている。
ここにリンクを張っておくが、A4で40ページを超えるけっこう長いものなので、時間があって、集中できるときだけに読まれるのがいいと思う。クマラスワミ報告全文
桜井氏が引かれた部分を孫引きするが、その内容はまことの驚くべきものである。
「連行された村の少女たちは非常に若く、大半が14歳から18歳だった」
「1日60人から70人の相手をさせた」
朝鮮人の少女が抗議すると「中隊長ヤマモト」が命令し「彼女を裸にし手足を縛り、釘の突き出た板の上で、釘が彼女の血や肉片で覆われるまで転がし、最後に彼女の首を切り落とした」(元慰安婦チョン・オクスンの証言)
このチョン・オクスンは「ヤマモト」がこう言ったと証言した。
「お前ら全員を殺すのは、犬を殺すより簡単だ」「朝鮮人女が泣いているのは食べていないからだ。この人間の肉を煮て食わせてやれ」
性病の拡散防止のため「殺菌消毒」と称して「少女の局部に熱した鉄の棒を突っ込んだ」「少女の半数以上が殺害された」
いくら戦場であるとはいえ、こんなことを日本人がすると考える日本人はいない。そういうことを考えるのは中国人・韓国人を含む外国人である。日本にもかつて五右衛門は釜茹での刑になったし、江戸時代には獄門・さらし首があった。しかし、アングロサクソンのキリスト教徒が行ったような残虐な刑はなかったし、中国や朝鮮で行われた身体を6つに分けて晒したり、生きたまま皮を剥ぐなどといういわゆる「凌遅刑」なるものは存在しなかった。
こんな話を創作できるのは、日本人ではないことは確かなことだと、ぼくは考える。
次の記述は、吉田清治の『私の戦争犯罪』から引かれたものである。
「強制連行を行った一人である吉田清治は戦時中の体験をもとに書いた中で、国家総動員法の一部である国民勤労報告会の下で、他の朝鮮人とともに1000人もの女性を「慰安婦」として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している。」
しかし、これが全くの創作であることは、朝日新聞がこの吉田清治の証言をもとに捏造報道を続けたいたにもかかわらず、かなりはっきりと論証されていた。
日本国としても、外務省が対応して抗議を行っていたようではある。しかし、政府として強制連行を認めた「河野談話」が存在することが、反論を帳消しにしていたといえる。だから、桜井よしこ氏は、日本国政府の「河野談話」否定の表明が必要であることを主張していた。
マクドゥガルは、かつて南アフリカ共和国における人種隔離政策のアパルトヘイトに反対し、差別反対、人権擁護の活動を長期にわたって続けたことで有名で、 今日、世界でもっとも著名で信頼される人権理論家・活動家の一人であり、ジョージタウン大学客員教授に迎えられている。 この報告書は、書物として出版されている。翻訳本は「戦時・性暴力をどう裁くか―国連マクドゥーガル報告全訳」というタイトルであり、それは多くの人に読まれていることを意味している。
この報告書では、慰安所はレイプ・センターと定義 され、「奴隷にされた女性たちの多くは11歳から20歳」 「多くは子供だった」「毎日強制的にレイプ」「厳しい肉体的虐待」「生き延びた女性はわずか25%」と明記している。 日本軍の行為は「人道に対する罪」だと断定しているのだ。
注目すべきは、日本軍性奴隷制(「慰安婦」問題)が主題として取り上げられており、国際法に基づく詳細な分析をもとに日本政府に対する勧告を呈示している。そして、2000年報告書においても、日本軍性奴隷制に1章を割いて被害者への法的賠償と責任者の訴追を勧告していることである。この由々しき問題と事態に日本政府は的確に対応してきたのだろうか。
ボツダム宣言の受諾の後、日本官僚の中に二つの考えが存在した。とりあえず今は負けた振りをしておこう。時節を待って捲土重来だ。もう一つは、負けたのだから致し方なかろう。勝者に従うのが無難な道なのだというものだった。前者の考えは、そうした考えを持った人が年月とともに消えて行くとともに、後の考えが一般的になって行った。すべてアメリカに従いもめ事を避け、何事も無難にややこしいとは先送りにしよう。これが外務省を始めとする官僚の考えであり、政治家もこれと異なるものではなかったとぼくは思う。これぞ「東京裁判史観」という訳である。
そうした中で、「河野談話」も生まれた訳だし、「クマラスワミ報告」と「マクドゥガル報告」に対しての日本政府の対応は決して充分なものではなかったと思える。
だいたい、「慰安婦」問題に対して、正面切って立ち向かうという姿勢を示したことなど一度もなかったのではなかろうか。
安倍政権は「日本を取り戻す」と旗印を掲げて成立した。しかしその取り戻すべき日本とはどんな形のものなのか。それを明確にせずして、安倍政権がこの問題に十分な対応が出来るとは思えないのだ。
ことさら事を荒立てる必要はないとしても、反日対策特命大臣くらいはきめて、戦略と戦術を練る必要があるとぼくは思う。このまま対応することなく放置すれば、顔面に埋め込まれた壊疽菌のような病巣はどんどん固定化し、修復不可能な醜いケロイドとなって残ることになる。
日本弁護士連合会(日弁連)は1992年に戸塚悦朗弁護士を海外調査特別委員に任命した。日弁連とはどんな組織なのかを調べてみた。ホームページで見ると、いくつもの決議や声明を行っている。目だったものを二つ取り出してみる。
◉恒久平和主義、基本的人権の意義を確認し、「国防軍」の創設に反対する決議
◉集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明
これだけで、どんな組織か一目瞭然であるが、そこから派遣された形の戸塚弁護士は、国連のNGOに所属する立場を利用して、慰安婦問題について猛烈な活動を行った。国連人権委員会が勧告を出すよう執拗に働きかけ、20回近い会合に出席して吉田清治の話を英訳して配布し、慰安婦をSex Slaveと英訳して世界に紹介したのである。
どこの國の人であれ、自分の國の悪事を暴こうとしている人がいれば、誰だってその国が嘘をついていると考えるのが普通である。「クマラスワミ報告」も「マクドゥガル報告書」も、そういう訳で自信に満ち満ちた記述となっているのだろう。
こうした「反日日本人」が存在し、そんな人物を派遣する「反日組織」が存在し、さらにまたそれを正義のように広報するマスコミが存在する。そんな國は日本を除いて世界のどこにも存在しないと言っていい。
戦後70年が経ち、祖国を貶めることになんの痛痒も感じない日本人が存在し、そればかりかそうした考えが国際人にふさわしいなどという異様な感覚と思想を持つ日本人が多数存在する日本において、「日本を取り戻す」ことは不可能に近いとも思われてきた。
しかし、今回の朝日新聞の問題が明らかにしたように、状況は変わりつつある。かつては上からの一方的な情報の流布であり、その情報は好きなように取捨選択して報道することが出来た。それを受ける一般大衆は自在に操られるものであり、「声なき声」の集団に過ぎなかった。
ところが今や、「声なき声」は大声を上げ、響き合い、対話を始めるようになった。
日本は、取り戻すべき國の形を模索しつつ変わりうるのではないかとも思えるようになってきたのかもしれない。
とはいえ、NHKは依然としてその影響力を欲しいままにしているといえる。真の日本を取り戻すのは、政権ではなくて我々草莽の民であり、草莽の声が木霊し合い、増幅され強固で揺るぎないものになることが必要であることを我々自身がまず知る必要があると思うのだ。
どうして、嘘をついてまで自分の国を貶める必要があるのでしょうね。戸塚悦朗弁護士という名前を、私の記憶にしっかり残しておきます。