この頃マスコミのそこここで、やたらパナマ文書というのが取り上げられています。世界中で問題になっているようです。
しかしテレビの報道ではどうも分かったようで分からない。
一緒に言われるのがタックスヘイブンというやつです。ぼくはかなり前からこれを聞いていたのですが、税金逃れにとっては恵まれた場所なのでタックスの天国なんだと思っていました。でもそれはヘーブンではなくてヘイブンだった。
Heaven(ヘーヴン、楽園)ではなくてhaven(ヘイヴン、避難場所)だったわけです。英語では正確には低課税地域を意味するのですが、フランス語ではパラディ・フィスカル(仏: paradis fiscal)つまり「税の(fiscal)楽園、天国(paradis)」というらしいので、ややこしことです。
そしてこのタックスヘイブンは税金逃れやマネーロンダリングあるいは公にできないお金の使用のために利用されるとされています。だからそういうよからぬものを作るのは悪い人たちだと思えます。うまいカラクリを考えて、違法とはならないようにしているのだろう。そんな風に勘ぐりたくなるのが普通でしょう。
香港でペーパカンパニーは約30万円で作れるのだそうです。
そういうわけで世界中には、こうしたタックスヘイブンがいっぱいあります。
ある取引で本来ならその国の銀行に代金が振り込まれると、当然課税されますが、タックスヘイブンの銀行に振り込んでもらうと、無税あるいは極めて安い税金を取られるだけですから、大変嬉しいというわけです。しかし、本来自国に入る税収は無くなりますから、これは国賊的行為ということになります。ばれると大変です。だからタックスヘイブンの銀行はお客の名を残さず全てコードで扱います。取引の記録も残さないのだそうです。
そうした取引は、窓口で直にやらないとできないのですが、そんなことは大変なので、付随した事務所があって、そこが全てを代行しているのだそうです。ここにはしっかりとした記録がある。
今回露見したパナマ文書というのは、こうした事務所の記録だったわけです。
それにしても、そんな2〜3テラバイトにも及ぶという文書が、どのようにして流出したのか疑問です。ハッキングによると言われれいますが、そんな大量のファイルがハッキングでダウンロードできるとは普通考えられないと思うのです。
先ごろフランスの経済学者・ビケティ氏が来日し、彼の著書『21世紀の資本』が話題になりました。この大部の本が述べているのは、20世紀の始まりから現在までをつぶさに調べた結果、資本の収益率は経済の収益率よりも大きくなっていることが分かったというものです。つまり、経済の大きさが拡大するよりも資本の取り分が大きくなっているということです。ただ、例外があって、それは第一次・第二次大戦間とその前後はそうはなっていないというのです。
戦争という異常な時代を別にして、不動産や株を持っている人が儲かるよりも、働いている人の儲けは少ない。その格差は増大しつつあるというのです。
彼はこの資本主義の弊害は、税制による富の再分配によって解決できると思われるが、その時に問題となるのが、タックスヘイブンの存在だと言っていたように記憶しています。
すぐに沙汰止みになったようですが、ピケティ理論を大喜びで受け取ったのは民主党だったようです。確かに格差は広がっていますが、日本のそれは欧米とは違います。
巨大な富を溜め込んでいる階層を殺して国を作ったのはフランスだったし、アフリカで強制拉致した黒人を奴隷船で運んできて、富を蓄えたのはアメリカでした。ゲルマンやアングロサクソンの白人には、本能的に富を奪う本能があるとぼくは思っています。
一方我が国日本では、民衆は古来より収奪の対象ではありませんでした。マルクス史観に毒されたれた人によって、そうした部分だけを誇張して書かれた歴史が流布されていることを知る必要があるでしょう。
日本では、支配者は富を個人的に蓄えるのは倫理にもとると考えたと思うのです。この考えは戦争に負けて日本の伝統的な精神が失われてゆく今日でも、消えてしまっているとは考えられないと思います。
今日グローバル化の流れに毒された財界人が増え、戦後の憲法によって公の論理より個人の権利の異常肥大によって、金の亡者が増え、なんでも金金の世の中になっているとも言えます。
しかし、振り返ってよく考えれば、戦後日本の企業を起こした人たちが意図したことは、日本国のため、日本の国民のために会社を繁栄させるということだった。自分が儲けることではなかった。
こうした日本独自の倫理観は、世界に誇るべきものであり、それを掲げることは世界における日本の位置を示すことにつながると思うのです。