日本中が結構大騒ぎしたかにも感じられた東京都知事選挙も終わりました。
選挙公示あたりから、しばらく東京に滞在していたこともあってか、いつもよりもかなり関心を持っていたことは事実のようです。
昔はかなり興味があって、その講演を聞きに行ったりしたこともあった鳥越さんが、究極の後出しジャンケンとも言われたタイミングで出馬を表明した頃から、ある切迫感みたいなものがぼくを襲いました。
こんな人が当選したらとんでもないことになる。そう思ったのです。かなり前からこの人の欺瞞性みたいなものに薄々気づいてはいました。それが決定的になったのはNHKのファミリーヒストリーという番組を見た時でした。
変に反権力をてらい、父親までも権力とする不自然なポーズにある幼児性と不自然さを感じたのです。
東京では、もっぱらネットのニュースや動画ばかりを追っていました。選挙活動が始まって数日した頃、ぼくはもう安心していました。この人が当選することは全くないという確信みたいなものが生まれたからです。東京都民はそんなに馬鹿でも間抜けでもない。
始め頃の発言を聞いて、この人認知症ではないかと思ったのです。
そんなことは普通には分からないことです。認知症や認知症に近い父親を持った人にだけは分かることだと思います。だからぼくはこれはどうしようもなくダメだと思ったのです。
どうしようもなくダメだったのは本人だけではありませんでした。この人をこぞって党利党略というか利己的戦術だけで担ぎ上げた政治家たち、またかつて女性差別や女性の人権を振りかざしていたマルクス主義女権運動家のいわゆるウーマンリブの女性たち、鳥越さんはこうした人たちの無様さを浮き上がらせてくれたと言えるでしょう。
宇治の自宅に帰ってすぐに投票日になりました。そして結果は予想通りといえるものでした。ただ、小池百合子さんの得票数は思っていた以上でした。
しかし振り返って考えれば、この結果は一週間前の世論調査で既に示されていたと言えるかもしれません。その時既に小池独走ともいえる結果が出ていたとも言えるようです。
正直言って、鳥越でなければそれで十分とぼくは思っていましたから、ともかくホッとしたわけです。
得票数を見てみると、小池百合子291万、増田寛也179万、鳥越俊太郎134万というわけで、鳥越さんは小池さんの半数にも達していません。東京都民の民度は高いと思いました。
今回の選挙の立候補者は21名とかで、これまでで最多だったといいます。鳥越さんの次は上杉隆17万、そして桜井誠11万でした。上杉隆というのは、最近亡くなった鳩山邦夫邦夫氏の秘書をしていた人のようです。
その次の桜井誠さんは、あの有名な「在特会」(在日特権を許さない市民の会)の代表です。ネットでの街頭演説の動画においては他の候補を上回るアップを誇っていたようです。
弁舌は爽やかで、なかなかの説得力のあるものでした。在特会といえば、とんでもないヘイトスピーチをする人たちばかりと思い込んでいたのですが、弁舌の内容は極めて納得のゆくものだったように思います。
もし、マスコミが彼のことや主張を報道したら、もしかしたら得票数は数倍近くに増えたかもしれないと思ったことでした。
それにしても、これらのいわゆる泡沫候補と言われる人たち18人は、なぜ大枚300万円も叩いて立候補したのでしょうか。それがぼくには疑問でした。少し調べたらその理由がわかりました。
日本国では、参院選、知事選に限って、立候補者にはNHKと民放での政見放送が無償で提供される決まりがあるのだそうです。民放は持ち回りの一社ということになっています。(衆院選では政党のみに限られます。)
許される放送回数はNHKが2回、民放が3回です。テレビだけではなくラジオでもNHK2回、民放1回。これら各回五分ほどの政見放送が許されます。
その放送費用は日本政府持ちで、著作権も編集権も局側にはありません。だから自由にダウンロードできるわけです。
この放送費用はどれくらいなのかというとこれがハンパではないのです。
ちなみにネットで福島テレビの料金表で見ると、平日と土日あるいは時間帯によって異なりますが、5分間の料金は40万〜14万です。
その他ビラなどの費用も貰えるようで、意見を公に発表する方法としては、無駄ではないという考えが成り立つようなのです。
そして今回で言えば、50万票以上を取れば、300万の供託金を返す必要もなくなるのだそうです。
こうした政見放送では、テレビ局側に編集権はありませんから、勝手にカットできません。今回のいわゆる泡沫候補の一人立花孝志氏は、NHKの政見放送で「NHKをぶっつぶせ」と十数回叫びました。彼は受信料不払い運動を主唱する政党を立ち上げた千葉の市議でした。
彼は、筑波大学の仲間に頼んで、NHKの電波だけを遮断するフィルターを作ってもらいました。これは「イラネッチケー」という商品名で市販されています。これを装着して不払いを正当化する裁判を起こしていましたが、敗訴しました。裁判長は「それをつけても取外せる」という判断をしたそうで、彼は今度は取り外せないように溶接して再度裁判を起こすと言っている。彼の得た票数は2万でした。元NHKの職員だったという彼が、NHKの反日的な報道について一切言わないのは、少々不思議な気もしました。
日本全国を見渡せば、いたるところで選挙が間断なく行われているのだそうで、そこでは一定のお金を払えば、堂々とテレビ出演ができる。それを目当てに、半ば趣味的に立候補を繰り返している人もいるのだそうです。
NHKをぶっ潰せという放送もNHKは拒否も削除もできない政見放送なのですが、公序良俗に反するものはこの限りではないようです。
後藤輝樹という男が立候補していて、彼は変な放送マニアともいうべき男のようで、これまでに7回の落選を繰り返しているようです。その政見放送は、冒頭では変な身振りともに「XXX主義ってなんだ!」というフレーズが繰り返され、なんだかSealsのラップみたいと思っていたら、次には何の脈絡もなく、男性女性の性器の呼称を繰り返し、北は北海道から南は沖縄まで各地域における女性器の呼称を羅列してゆきます。
さすがに、部分部分は削除されていますが、この男はそれを不当として、裁判に訴えると言っているのだそうです。「後藤輝樹、政見放送」でグーグルと出てくるニコニコの動画では、カット部分がテロップで流れています。
こんな男の表現の自由とかの主張を許していると日本という国、そしてその男が7031票を得るような国はいい国なのか、どうしようもなくダメな国なのか混乱してしまいます。
いずれにしろ、3人のみに絞り、後を泡沫として名前を列記することだけで無視したこのような選挙の状況は、正当な民主主義とは言い難いという気がしていて、こうした制度は是正すべきではないかという気がしているのです。