金正恩という男は決して馬鹿ではないし、無茶をやる人でもないと思います。結構神経が細やかで、そして臆病でもある。
トランプの動きに彼はビビりまくった。そう思います。
トランプを研究する必要に迫られて、たとえばツイッターなどはすべて記録し、研究分析し尽くしたようです。でも結局よくわからなかったのではないか。
これまで、北朝鮮は何度も核開発をやめる、ミサイルもやめると嘘をつき、その代わりと言って経済援助を引き出す。これを繰り返してきました。
でも、世界を動かす各国は、そんな嘘を見抜けなかったのか。なぜ解決を先延ばししてきたのか。そんなにまで、善人揃いだったのか。そんなはずはないではありませんか。
北朝鮮の存在が必要だった勢力が存在したのだと思います。
それを知っていたから、北朝鮮は態度を変えようとはしなかったと思います。それは、トランプ政権が誕生しても、あまり変わることはなかったようです。
平昌オリンピックを利用して、韓国の文政権を手先のように使いながら、鼻高々の外交を展開していました。これは計算通りだったと思われます。あれほど嫌っていた米韓軍事演習を認めますなどと言いました。
文在寅政権が送った使節の誘導にすんなり乗って、トランプは米朝会談をやりましょうと言った。これにはびっくりしたはずです。しかし、それは北朝鮮の目標でしたから大いに喜ぶべきことのはずでした。
しかし、ビビりました。トランプが何を要求するかはわかっています。それを拒絶したら、どうなるかも予想できました。
彼の父親である金正日は、かつて10日間にわたって全く消息不明になったことがありました。それは、アメリカが攻撃を始めそうだという緊迫した時期でした。おそらく、攻撃を恐れて身を隠したのだと思われます。金正日が中国訪問に決して飛行機を使わなかったのは、空軍を持たないので、撃墜を恐れたからだと思われます。
今回金正恩もおなじように汽車を使いました。今の状況は、金正日の時より緊迫しています。
昨年、ある夜にアメリカのステルス戦闘機が北朝鮮に侵入し、それをあの国の旧式のレーダーは捕捉できなかった。その戦闘機は、来たぞと知らせるために平壌の上空で急上昇し、音速突破時の爆発音を聞かせたのだそうです。
アメリカのステルスB1爆撃機には、重さ200kgを超す地中貫通爆弾、いわゆるバンカーバスターが搭載されています。
トランプは先ごろ、核弾頭の小型化を宣言し、そうすると粘土層数十メートル貫通したのちに爆発するというこのバンカーバスターに装着されるかもしれない。そうなると、地下150mにあるという彼の寝所も危ないかもしれない。彼はビビったかもしれません。
トランプ政権には大きな変化がありました。これまでの穏健で融和的な対北朝鮮外交を行ってきた官僚を次々と強硬派に入れ替え始めたのです。
これは、トランプが異例とも思えるダボス会議に参加したのちの変化でした。おそらく、ここの会議で大きな変化が訪れた。これまで北朝鮮を支えてきた勢力が考えを変えたと思われます。トランプもここである確信を得たかもしれません。
TPPに入ることを検討してもいいなどと言い出したのも、この後のことでした。
こうした変化は金正恩も当然知ることとなったでしょう。
打開策の検討に迫られました。頼りにできるのは、二つの国。ロシアと中国です。ロシアは北朝鮮生みの親みたいな国でもあります。中国は一緒に朝鮮戦争を戦った国で、同盟国でもある。
そんな時、イギリスで元ロシアスパイの暗殺未遂事件が起こりました。イギリスは、この化学兵器の使用はロシア以外には考えられないとして、ロシア外交官23名を国外追放します。これに対抗して、ロシアも23名のイギリス外交官を追放。これを受けて、アメリカはなんと60名ものロシア外交官を追放します。EU諸国も次々とこれに倣い、計100名をEUから追放する騒ぎとなりました。
冷戦の復活などとも言われます。
問題とされたのは、使われたのが国際的に禁止されている化学兵器としての薬物でした。金正恩には、やはり薬物で兄を殺した記憶に新しい覚えがある。怯えと孤立感は高まったのではないでしょうか。
格好つけて粋がっている時ではない。
というわけで、中国に救いを求める気になったわけです。
以上は、全てぼくの勝手な推論憶測に過ぎません。しかし、これでゆくと北朝鮮、もうあんまり、嘘をつきながら、核開発を続けるわけにも行かないという状況に立ち至っている。
中国だって、核開発には反対ですし、だから金正恩も習近平に「朝鮮半島の非核化」を言っています。その意味するところは、韓国の非核化つまり米軍の撤退です。
そんなことをトランプが納得するわけはなく、問題は米中のせめぎ合いに絞られてきます。
アメリカの先制攻撃の可能性は、決して減じたわけではない。米中の話し合いの内容は、北朝鮮の戦後処理に絞られてゆくのかもしれません。