新しい年を迎えて(最終回)

 第二次大戦で、連合国を率いて日本と勝ったアメリカは世界の覇権を握ります。戦後、戦時の連合国によるいわゆる国際連合なる世界組織を作り、また米ドルを基軸とするいわゆるブレトン・ウッズ体制と呼ばれる金融支配の仕組みが作られました。これは同時に、グローバリズムの始まりとも言えます。
 歴史で初めて、マルクス・レーニンの唱えたマルクス・レーニン主義という世界革命主義によって、ロシア帝国はプロリタリアートによって倒されました。そして共産主義によって立つソ連邦が成立します。
 世界は、資本主義国グループと共産主義国グループに別れることになり、アメリカはソ連邦と対峙することになりました。ここに世界を二分する冷戦構造の世界が生まれたわけです。
 ソ連邦の人間性と遊離した計画主義経済は弱体化せざるをえず、やがて、アメリカのレーガン大統領の軍事的ハッタリ戦略に怯えた結果、ソ連邦は崩壊することになりました。
 これを見て、共産主義国家という歴史の実験は失敗だった。資本主義は優位の確証を得たのだとして、パクス・アメリカーナが唱えられました。つまり、軍事的・経済的優位による平和です。それは世界の警察の宣言でもありました。
 
 1980年、アルビン・トフラーは『第三の波』を著しました。彼によれば、第一の波は農業革命、第二の波が産業革命、そして第三の波として情報革命が始まるとしたのです。第三の波はその具体的なものとして、やがてインターネットが地球を覆うことになりました。
 戦後大いに経済的発展を謳歌したアメリカも、やがて製造業の衰退を迎え、主軸を金融に移動させます。金融のグローバリズム・グローバル化は大きく進展し、ウオール街とマス・メディアの連携による世界支配の構図が形作られて行きました。
 グローバリズムとは、金・モノ・人の国境なき移動ということです。国籍を持たない企業が、もっとも功利的な方法によって金を稼ぐということです。このグローバル化は世界的な波として広がりました。
 情報革命によって国境の壁をなくした国際資本は、低開発国の民衆にとどまらず、世界中の民衆を奴隷的労働者とする現代の植民地支配を作り出して行きました。

 その結果として、かつてない富の偏在がもたらされました。大きな賃金格差が生まれました。この耐えがたい状態に怒ったアメリカの民衆が生み出したのが、トランプ政権だったと言えます。
 トランプは、オバマを目の敵にして、彼の決めたことをことごとくひっくり返していると言われますが、オバマ政権はグローバリズムの終点ともいう形を作ろうとしていたわけで、反グローバリズムを目指すトランプの行動は極めて理にかなったものであるとも言えます。
 グローバリズムによってもたらせる不合理や欠陥を、互いに連携を取りながら巧妙に隠してきたのが、アメリカのマス・メディアとウオール街でした。だから、トランプはテレビを一切用いず、もっぱらツウィッターというネット上のメディアを用いているのだと思います。
 このような反グローバル化の動きは、アメリカにとどまらず、世界中で起こっています。ブレクジットもこの動きの一つであると言えるでしょう。EUの国に限らず、他の国でも同じ動きを見ることができます。唯一の例外国が我が国であるようです。あらゆる国で極右と呼ばれる政党が伸びているのに、日本は穏健中道の自民党が居座り、右の政党を欠いています。世界の潮流からの一周遅れと言われる所以でしょう。

 ソ連邦の崩壊とアメリカ経済の衰退を受けて躍り出てきたのがチャイナでした。その全体主義の利点を生かして、世界の約束事を無視し手段を選ばず、一途に急速な発展を遂げてきました。チャイナは、共産主義を奉じる共産党という支配層によって支配される資本主義国であるという、なんとも理屈に合わない奇妙な国とも言えます。
 支配者としての共産党は、ほしいままの強制力によって、植民地主義的な搾取を行うことによって、富を蓄えてきました。
 そして、今やアメリカと対峙しつつあります。チャイナが掲げる「中国制造2025」によれば、2025年には世界列強と肩を並べ、2045年にはあらゆる分野で、世界を支配するというロードマップを示しています。

米国はGAFA
チャイナはBATH

 インターネットの世界でも、チャイナはアメリカと同等のシステムを作り上げ、これを世界に広めようとしています。
 アメリカでは、Google、Apple、Facebook、Amazonで、いわゆるGAFAです。かたやチャイナは、Baidu、Fuawai、Tencent、Alibabaで、いわゆるBATHです。
 チャイナでのこうした方針は胡錦濤の頃に既に決まっており、企業合併や技術盗用を繰り返し、習近平の今、ほとんど同等のシステムを作り上げたと言えます。アメリカもブッシュの頃から気づいていたとも言われますが、オバマの時代に一気にあらゆる面で悔やまれる状態を作らせてしまった。
 民主活動家などという人に国を任せると、結構危険なのではないか。オバマしかり、菅直人しかり、韓国の文さんも危ないという気がしています。
 こうしたIT技術は、安全保障と緊密に結びついている、というより安全保障技術そのものであるため、その覇権争いは、国家存亡を賭けた熾烈なものとなります。
 今の米国とチャイナの争いは貿易戦争などという生易しいものではなく、アメリカが覇権を取られまいとする決死の戦いであって、いつまで続くかわからないほど長い争いになります。

 フランス革命において掲げられた近代国家社会の共通理念は今や空疎な理念と成り果てました。チャイナもロシアもアメリカも民主主義を唱えますが、それぞれは同じものではないし、掛け声でしかない。今世界で国家・個人を問わず一致できる理念があるとすれば、それは、「今だけ、金だけ、自分だけ」という考えであるかのようです。
 世界の人々のほとんどが、スマホという便利な道具を持ち、個人が自由な発信や交流が行えるようになって、個の確立ができたと見えても、むしろそれは、「個」が「孤」となって分断されただけのようです。
 チャイナは、完成されたIT技術によって、民衆を完全な監視のもとに置く政策を完成させようとしています。「国民評価法」という法律によって、全人民は評価されます。1000点満点で500点以下では、電車の切符も売ってもらえない。そして全人民の半数以上は自由に移動すらできないことになります。
 こんな国に支配されることがないように、氣を配ることが必要です。

 バランス感覚を欠いた個人権利偏重の思想は、LGBTのスローガンを生み、さらにLGBTQ、そしてLGBTQT、LGBTQTTなどという馬鹿げた主張となっているようです。そういうことを声高に唱える人権運動家にあんまりまともな人はいないように思います。
 ドイツの暗号機エニグマの解読に成功したイギリスのアラン・チューリングは、コンピュータの原理を考えた天才でしたが、彼は同性愛者でした。当時イギリスでは、それは犯罪とされていたので、彼は捉えられホルモン剤を強要され、自殺に追い込まれることになりました。
 我が国では、古くからあったそうした少数者の存在は、江戸時代になって、歌舞伎などの芸術として花開きました。『剣客商売』には、白粉、眉墨、口紅で化粧する女男の武芸者や、男装の女武芸者も登場します。
 2千年以上の歴史を持つ我が国日本が、その十分の一ほどの歴史しかない国の風潮の真似をすることなど、毛頭ないと知るべきだと思います。

 ぼくが生きてきた昭和から平成の時代は、日本にとっては大変動の時代だったと言えるでしょう。
 そして、今年は昭和が終わる御世代わりの年になります。世界の大きな変動の時代が始まるでしょうし、我が国でも、激動の時代がやってくると思われます。
 日本においては、新年号の発表、統一地方選、新天皇即位・改元、G20大阪サミット、参院選、ラグビーW杯、大嘗祭そして消費税引き上げ。なんとまあ、次から次へと大きな行事が目白押しにやってきます。そして来年はオリンピックです。
 それにしても、今の時代、誠に面白い時代だと今更のように思うのです。国内外を問わず、面白いことがどんどん起こっていて、誠に興味がつきません。
 昭和の初め2.26事件の年に生まれたぼくが、こんな時まで生き延びてきたのは、お天道様と皆様のお陰であるし、幸せ者だと思わないといけない。そんな気がしています。
 我が日本国は、現実として、アメリカの属国として存在しているけれど、紛れもなく世界最古の国であり、比べるべくもない高い民度を持った国民が生きている。万世一系の天皇という精神的に国を体現する存在を奉じる類を見ない国体を持つ国家が、一部の人が言うように、やがて滅びるなどとは考えにくいと思うのです。
 むしろ、この混迷の世界が少しずつ落ち着きを取り戻してきた時、どこか手本にする国があるかといえば、それは我が国ではなかろうか。
 そんな気持ちで、杯を上げることがあれば、日本国よ「いやさか!」と唱えることにしているのです。 

新しい年を迎えて(最終回)」への2件のフィードバック

  1. 「元日や一系の天子不二の山」ですね。
    日本は属国であるのは言わずもがなです。
    ソ連が崩壊したのと同じように中国共産党主導のチャイナも計画経済政策で崩壊するのではと考えています。日本でも配給制度開始と同時に市場から物がなくなったそうですが、生産者は沢山蓄えていたそうです。

  2.  日本が属国で無くなるのには、数世代を要するのではないかと思います。
     チャイナもその頃には、幾つかの国に分解しているでしょう。資本主義と共産主義が混ざり合ったより自由な国が生まれているかもしれません。遠い未来のことでしょう。

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