「フィルムに刻まれた20世紀の記憶。それは未来への遺産である」というナレーションで始まる<池上彰の20世紀を見にゆく>というBSジャパンの番組を、最近熱心に見ている。最近終了したが、そのまま最初から再放送が始まっている。月〜金の毎日で、2話づつの15分。
日露戦争の二人の元帥ということで乃木将軍と東郷元帥についてが初回で、太平洋戦争での日本敗戦で終わる。ほとんどが、知っているはなしではあるが、知らなかったことも多い。今更のように思えるのは、この世紀が大変な激動の時代だったということだ。
ぼくが生まれたのは、2.26事件の年である。戦争が終わったのは国民学校(小学校となったのは戦後)の5年の時である。となると、厳しい戦時下の状況を体験したはずなのだが、いっこうにそんな記憶がない。
戦争終了まじかの頃、学校からの帰り道に、空の上から轟音とともにグラマン戦闘機が真っすぐに向かって来た。ぼく達小学生の2人は道の脇に走り、土手に身を伏せた。首をもたげると、すぐ近くにグラマン機のシールド窓からパイロットの顔がはっきり見えた。その顔は確かに笑っていた。ダダダダと機銃音がして、2mほど横の土手には、穴があいた。不思議に何の恐怖も憶えなかった。開いた穴を掘って、鉛片を持ち帰って母親に叱られた。
そのグラマンパイロットも命中させる気もなかったのだと思うし、もうその頃は迎え撃つ零戦もなく、地上から砲撃される恐れもなく、退屈していたのだろうと思う。
その頃、奴らにとって、日本の空は遊覧飛行の場みたいになっていたのだろう。