突如消息を絶ったマレーシア航空機。2週間経った今も行方不明のままです。
ぼく自身この前のイタリア行きはマレーシア航空を使ったので、なんだか人ごとではない感じでおおいに関心を持っていました。マレーシア航空は安いのはいいのですが、クアラルンプールでの乗り継ぎの時間が尋常じゃありません。行きも帰りも8時間以上というので、空港内のホテルに入って仮眠を取って時間を過ごしました。
それに、この空港まともなレストランもない。
帰ってきてから、誰かから「年寄りの乗るヒコーキじゃない」といわれました。ぼくも二度と乗る気はなかったのですが。
それにしても、一体どこに行ってしまったのでしょうか。
だいたい航空機行方不明事故というのはそんなに珍しくないそうで、ここ50年ほどの間に80件ほども起こっているのだそうです。
そうした中で、今回のこの事件がなんとなく普通でなく思えるのは、今の世界情勢による所が大きいのではないかと、ぼくは感じています。
ウクライナ・クリミア半島での紛争がクローズアップされ、中国では3月1日に起こった異常な昆明無差別殺傷事件の不安の中で、5日から中国の国会にあたる全人代(全国人民代表大会)が開かれている最中の出来事だったからです。
3月8日、クアラルンプールを飛び立ったマレーシア航空機MH870便は、目的地の北京に向けて飛行した1時間後、突如通信が途絶えレーダーからも消えました。
最初最大の問題となったのは、どうして通信が途絶えたのかということでした。普通そんなことはあり得ない。
そうしたことが起こるのは、ただ一つ電源の喪失だけしか考えられないといいます。しかしそんなことは起こりえないような対策が飛行機には講じられている。
ボーイング777というのは、一つの完成形に近づいたともいえる飛行機で、特徴は電子制御ということです。それも単純な電子制御ではなく、たとえば操縦桿も大きく切る時には大きくなるに従って動かすのが重くなるように制御される仕組みになっているのだそうです。こうしたことはWikiPediaに長文で載っています。
そこで、当然出てくるのは、空中爆発、空中分解、きりもみ墜落などという推測です。
中国政府は、乗客の大半は153名の中国人でもあるとして、即時に4隻の軍艦を含む揚陸艦、駆逐艦、商業船、警察の巡視船など合わせて計9隻を派遣し、領海紛争地である地域に史上最大の救援作戦を展開しました。
そしてあろうことか、10日には「緊急時に備えてすぐに対応できるようにスプラトリー諸島に支那の救援基地建設を」と高らかに提言して、空港と海港を作る必要があると軍の少将が述べたといいます。
また、この前日の9日には、こんな報道も行われました。
支那が領有権を主張し、フィリピンが実効支配をしている南シナ海のアユンギン礁近くで、支那海警局の艦船が資材を積んだフィリピン国旗を掲げた船2隻を見つけ、立ち退くように呼びかけた。2隻は現場から速やかに離れた。中国外務省の報道局長は「我が国はアユンギン礁を含めた南沙諸島と周辺海域に主権を有している。フィリピンの行為は支那の領土主権を侵犯するものであり、必要な対応を取る」と警告した。
つまり、チャイナはこの事故を南沙諸島やその海域での領海主張のための好機と捉え、最大限のプレゼンスを行ったといえると思います。
そしてまた同じ頃、自国の10個の監視衛星が事故機と思われる海上浮遊物を発見したと誇らしげにその写真を公表したのですが、すぐに間違いだったと訂正しました。
現在地球の周りには数えきれないほどの人工衛星が飛んでおり、常に地上を見ているといえます。これはぼくたちが使っているカーナビやiPhoneのGPSはすべて人工衛星に頼っていることを考えれば、容易に納得できることです。
そうであってみれば、MH870便の行方が知れないというのは不思議という他はないといえます。
事故機の残骸が発見されない中、不時着説が生まれました。ベトナムの北の方には知られていない飛行場が多数あり、そこに密かに着陸しているというのです。なぜベトナムかというと、最後の交信がベトナムの領空に入る直前で「了解。おやすみ」というものだったからです。それだったとしたら、200人を超える乗客はどうなったのだということになり、無理な推論だったようです。
また墜落したのなら、機の破片や毛布などの浮遊物が浮き上がってくるはずで、それがまったく発見されないのはおかしいことです。
777はジェット・エンジンが止まっても滑空する能力があるそうで、海上に無傷で不時着出来るそうです。そうであれば、浮遊物がないという説明はつきます。
その時でも飛行機のブラックボックスは海中に没したときから30日間、電池が切れるまで間断なく音波を発信してその場所を知らせる仕組みになっています。しかし、これも深度3000メートルまでといいます。
しばらく経った頃には、機体の損傷やトラブル説は消えていました。それは連絡を絶った後も軍関係のレーターには捉えられていたという事実が判明したからです。
飛行機には常時通信を送るトランスボンダとエイカーズという二つの通信装備があるのですが、事故発生と見られた時間より後も作動していたことが分かった。そして事故発生後、それは人為的に切断された。
エイカーズというデータ送信システムが途切れたのが1時7分、トランスボンダが切れたのが1時21分でした。この14分の時間差は、誰かがスイッチを切ったということになりました。それも極めて専門的知識を持った人物が。
「何者かが同機から送信される通信を切断して進路変更をした可能性が高い」
マレーシアのナジブ・ラザク首相は会見を開き、そう述べたのです。それは3月15日のことで、それまでに一週間が経過していました。ここで、機長の関与が疑われ、マレーシア警察は機長自宅を捜索し、「自作のフライトシミュレータを発見」などという、少し首を傾げたくなるような事実が報じられました。それがどうしたという話です。
それにしても、今のべた時間差などのことがなぜ一週間も分からなかったのか。マレーシアはこのことを知らなかったのではないか。しかしアメリカは知っていた。あるいは伏せられていた。
ここでこの事件はなにか謀略めいたニュアンスを持ってくることになりました。
通信が途絶えた後に、この機が突如考えられない急上昇をし機体破壊の危険がある高度以上にまで上昇し、つづいて猛烈な急降下を行ったことが航跡の解析によって分かりました。
これに関しては、レーダーの追跡を逃れるためで、その後も巧みに低空飛行でレーダーの追跡をかいくぐってインド洋に出たという推測が行われました。どうしてなのか分からないのですが、アンダマン諸島周辺を目指したとされています。
一方では、急上昇・急降下は火災発生による火を消そうとしたとい説を唱える人もいました。
かなり早い段階で、ネットの裏情報で、こんな謀略説が流れていました。
ジャンボ・ジェットには自動操縦の機能は備わっていますから、自動操縦に切り替えると、そのモードではパイロットの制御は不能となります。
777は完全な電子制御機で、操縦をリモートコントロールに切り替えることができ、そのモードにするとパイロットの操縦は不能となる。だから、リモートコントロールによって機は自在に操れるというのです。この機能が777には密かに装備されているというのです。
これはたとえば、アメリカからアフガニスタンの無人攻撃機を遠隔操縦して機銃掃射や爆撃をやることが出来ることを考えれば容易に理解できることです。しかしこれは恐ろしいことで、もし本当なら、その機能をもつボーイング777はいつでも墜落させられてしまうということになります。
そこで生まれた説は、アメリカがリモコンでマレーシア航空機を操り、全人代の会場に突っ込ませようとした。これを察知した中国は、迎撃機を向かわせ撃墜せよとの指令を出したというのです。それは次のようなものでした。
中国の最高指導部が8日、軍に対し、北京中心部に近づこうとする不審な民間機があれば撃墜するよう緊急命令を出していたことを支那人権民主化運動ニュースセンターが伝えた。(共同)
しかしこの試みは上手くゆかずマレーシア機は反転していずこかに向かったということです。
これはその時点では裏情報であったのですが、たしか今日のネットのニュースには中国の撃墜指令が報じられ、表情報となったと思われましたが、その後消されたようです。
だいたいぼくは謀略説はきらいだし、こんな謀略説は常識的に考えれば馬鹿げていると思われます。しかしです。ぼくは、日航の123便の事故原因が圧力隔壁の破断によって引き起こされた垂直尾翼の破損によるものという結論をまったく信じていませんでした。この事故に関するすべての本を読んで得た結論でした。
あれは何かが垂直尾翼に当たって破断した。そう思っていました。当たったもの、それはたぶん自衛隊の標的機(戦闘機が射撃訓練の標的として飛ばす小さな飛行機で、オレンジ色に塗られている)だった。このことは時の首相もきっと知っていたはずだ。そう思っていました。
ところが、つい最近それは故意に米軍機から発射された標的機だったという説があることを知りました。なぜ米軍が123便を撃墜しようとしたのか。これにはいくつかの原因が挙げられるのだそうです。
一つは、あの機は核弾頭を運んでいた。日本は密かに核兵器を持とうとしていた。
次は、日本にプラザ合意を迫るための脅しであった。それが証拠にその後日本はあっさりとプラザ合意に応じ、長いデフレに苦しむことになりました。
さらにこれは付属的なものですが、123便には日本のトロンOSのトップ技術者16名が乗っていました。もしあの墜落がなかったら、Windowsは今の地位を築けなかっただろうというのです。
マレーシア機はどこに行ったのか。おそらくインド洋に沈んだのでしょう。そして、いずれ機体の破片が見つかり、フライトレコーダーも回収されるかも知れません。しかし、それでも、なぜこんなことが起こったのかという原因が解明されることはないような気がしています。
なぜ機長はそのような飛行をしたのか。あるいはハイジャック犯をコックピットに招き入れたのか。一つに家族を人質に脅迫された可能性があるとぼくは考えているのですが。
この世界の枠組みが変わろうとしてきしみだしている中で起こったこの不可解な事件をみて、なんともいえぬ気色悪さを感じるし、やはり国産の飛行機でないと安心して乗れんなあという気もしています。