70日間ほども表に出なかった小保方さんが、理研の調査委員会による自分のレポートの改ざん・捏造という判定に不服申し立てを行う記者会見を行いました。
会見は9日の午後1時より大阪のホテルのホールで多くの報道陣を集めて開かれ、ニコニコ動画を始めTVでも報道され、ぼくはニコ動でしっかり見たのです。
TVのほとんどのチャンネルでも同時中継で流されたのですが、やはりカットされてる部分が多く、ニコ動には及ばないと思われました。
この会見から色々なことが分かったように思います。まず、小保方さんの謝罪の弁から始まった会見は、こうした問題に強い二人の辣腕弁護士に挟まれてのもので、極めて法的な内容に感じられました。
つまり、理研の改ざん・捏造という判断が誤りであるということを立証しようというものであったということです。
記者どもの質問もこうした観点から行われていたようです。ぼくが聞きたかったのはそんなことではありませんでした。
報道にかかわる人たちがいかに程度が低いかが如実に示されたように感じざるを得ない会見だったように思いました。たとえば、小保方さんが割烹着をいつから着ていたのか、理研に来てからなのかなどという質問にどんな意味があるのか。
ニコ動の同時書き込みもひどいもので、まさに下劣そのものというものも多く、気持ちが悪くなったものです。科学というものの理解をまったく欠いているのです。
程度の悪い記者たちの質問ではあったのですが、それでも、そこで明らかになったことは、理研の調査の杜撰さでした。結論ありきで、罪を彼女一人に押し付けようとした調査であったことが明らかだと感じられました。たとえば、記録ノートを見せるように要求し、他にあることを調べもせずに、そこにあった2冊のみを見て、少なすぎると結論付けて、捏造の根拠とした。質問に対してはイエス・ノーのみの返答に制限され、説明が許されなかった、などなど。
弁護士による改ざん・捏造には当たらないとする説明で興味ある事実が示されました。それは通常細胞のDNAがSTAP細胞のDNAに変わったということを示す電気泳動の写真で、ここで彼女は通常細胞のDNA写真を貼付け挿入しました。これが改ざんの証拠とされたのです。左の写真が、電気泳動によって得られたSTAP細胞のDNAの写真です。
右の二本がSTAP細胞、真ん中が通常細胞で、これが右のSTAP細胞に変わったという説明画像なのです。
ところで、電気泳動とはなにか。簡単に説明しましょう。ゲル(ゼリー状のもの)の筒の一端に穴をあけそこにDNA試料を置きます。これに電気を通すと分子が電気に引かれて移動して行きます。この移動の速度は分子の大きさや形状によって異なるので、種類ごとに集まって分離します。これを展開と呼びます。
ちょうどヨーイドンで、子供と大人とデブを竹やぶの中を走らせたら、竹にぶつかりデブが一番遅れるようなものです。
ぼくは電気泳動はやったことはないのですが、同じような原理でゲルではなくろ紙を使う過去の手法のペーパークロマトグラフィーを専門的にやっていましたから、それから類推しての説明です。あんまり間違っていないと思いますが…。
右側の三つの展開は同時に行ったとされていますから、同じ長さでないといけない。ところが真ん中の通常細胞のものは、少し短いのです。後で貼付けたからそうなった。同じ細胞ではないようだと調査委員会は判断し、改ざんと判断したようなのです。
この日の弁護士(小保方)の説明では、間違いなくSTAP細胞に変化する前の細胞だったのだが、撮影したとき9度の傾き出来て写った。その為に少し短くなったのだ。そう説明し、写真を示しながら、角度を変えるとこのように揃いますという説明がされました。しかし、長さが揃っているという説明にはなっても、両者が同じ細胞だったという説明にはなりません。
今の事態に立ち至れば、小保方さんはSTAP細胞を再び作る以外に釈明の方法はない。
科学の世界では、ある事実が発見されたといっても、それが何度でも再現可能でなければなりませんし、AさんがやってもBさんがやっても、あるいはX氏がやっても同じ結果が出ないとそれは科学的事実あるいは法則とはなりません。パチンコ玉の落下は誰がやっても同じ結果が出るので、科学の対象となり落下の法則が生まれます。一枚の枯れ葉の落下は、同じ結果が出ないので、科学の対象とはなりません。
しかし、真空のガラス筒の中で、ゼムピンと羽毛は同時に落下し、物体の落下の法則を実証します。
だから、小保方さんがいくら200回成功したといっても、他の誰かが同じ方法・手順で成功しないと認められないのです。その為には、実験作業の手順(プロトコル)が詳細に紹介される必要があります。科学の世界では、それは私しか出来ない秘訣がありますでは通用しません。
小保方さんは聾の作曲家とは違います。ぼくはSTAP細胞は出来たのだと思います。でもどうして、会見で、STAP細胞作成のプロトコルを語らなかったのか。そして、そのことを誰も質問しなかったのか。細胞にストレスを与えることでSTAP現象が起こると、プロジェクト・リーダーで共同執筆者の丹羽仁史教授も小保方さんもいいます。それは、酸性の液だと言っていたようです。ではそれは何の液なのか、PHはいくらなのか。そういうことを一切明かさないのはなぜなのか。やみくもにやっていたら出来たというのでしょうか。
STAP細胞に関しては、最初の頃はアメリカのハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授の名前がちらちらしていました。共同執筆者で、小保方さんの先生でもあるし、「nature」に売り込んだのはたぶん彼ではないかと思います。彼は「今回の成果は日本とアメリカの研究機関の協力がなければ実現しなかった」と述べていました。
でもこれってなんだか、胡散臭い。
そう考えると、小保方さんのSTAP細胞もなんだかあやしげで、あのマレーシア航空機事故みたいな謎めいた雰囲気が漂うような気がしてきました。
いやいやそんなことはない。小保方さんはきっと成功して、明確なプロトコルを公表し、多くの人が追試に成功する。そう願っています。