新聞・テレビが伝えないTPPの詳細

安倍さんは、まもなく訪米しオバマと会談するそうです。テレビのコメンテーターは、お土産が必要ですといい、あたかもTPPをお土産の様に扱い、農業もこの際生まれ変わって競争力を付けないと駄目だと言ったりしています。
安倍さんは、国益にかなうものしか受け入れないと言っていますが、TPPというのはそんな生易しいものではないようです。
オバマは尖閣をカードとして、TPPを迫るようだし、中国は北朝鮮のミサイルをカードに尖閣問題への不介入をオバマに要求するという見え透いた稚拙な要求をしていますが、いづれにしろ安倍さんは苦しい交渉の局面にたっていると言えるようです。

ところで、ぼくたちはTPPの恐ろしさを、知っているのだろうか。知らされていないのだから、知らなくて当たり前なのである。
この頃になってようやく、TPPが農業だけではないということも報じられる様になってきたけれど、それが農業・製造業を含む24分野に及ぶものであることがさして強調されることはない。
詳しく列挙すると、全製造業、公共事業、サービス、衣料、医薬、銀行、保険、投資、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送などの非関税障壁撤廃を目指すものなのである。
それは、日本固有の文化と伝統を破壊し尽くすものと言っても決して言い過ぎではない。

日本は、戦争に負けてから、その必要がなくなったにも関わらず、GHQの指示に従い続けて来たといえる。例えば、太平洋戦争という言葉。アメリカにとっては太平洋の戦いであったのだが、日本からいえば、それは大東亜戦争であった。しかしこの言葉は、GHQによって使用が禁じられた。
サンフランシスコ講和条約で日本は独立し、占領を脱したのだから、大東亜戦争の呼称を取り戻してもよかった。しかしその呼び方は悪い人が起こした戦争の呼び方と考える自虐的な考えが一般化したようだ。
この様に、日本は敗戦後づっと、まるで占領下での態度を引きずる様にアメリカの指示に従って来た様に思える。
最近では、1994年より2008年まで毎年アメリカより出されていた「年次改革要望書」なるものに従って来た。これは2009年から「日米経済調和対話」と名称は変わったが、中身は一緒といえる。TPPはこの延長線上にあるといっていい。

TPPの危なさとして、それに内包されているISD条項とラチェット規定がある。ISD条項というのは、「国家主権侵害条項」のことで、外資系企業に対して自国民と同等の待遇が義務づけられる。そして不公平と見なされた国内法は非関税障壁として、外資系企業に提訴されるし、莫大な賠償要求を突きつけられる可能性がある。
訴訟は日本の裁判所ではなく、アメリカの世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)で行われることになっており、しかも一審制、非公開で行われる。一審制では控訴は出来ないし、アメリカで、非公開では、裁判の公正ささえ保証されない。
次のラチェット規定だが、これも大変なもので、「一度規制を緩和した場合、後戻りは許されない」というものなのだ。つまり、TPPは一度批准すると変更も脱退も出来ないのである。
こんな強権的で一方的な条項は、いったい誰に対しての取り決めなのか。開拓時代の先住民相手の取り決めではないのだぞ、といいたい。

TPPに関して、日本の関税の高さが言われ、「自主関税撤廃」が唱えられている。しかし本当はどうなのだろうか。本当に高いのか? 決して高くない。
有識者・経済人たちは、「平成の開国」「TPP開国論」などと声高に叫んでいる。こうした人たちは、嘘つきと言ってよく、やはり「祖国に仇なす日本人」の範疇に入れてもいいと思う。
すでに、ガット(関税および法益に関する協定)の多国間交渉により関税率は大きく低下しており、日本の関税負担率(関税収入額の総輸入額に対する比率)は、2005年度は1.7%で、先進国の中でももっとも低い国の一つである。ジェトロ(日本貿易振興機構)の資料でWTO(世界貿易機構)発表の「加盟国2010年関税リスト(World Tariff Profiles2010)」では、日本は4.9%で12位なのである。関税が低いと豪語するアメリカは3.5%で15位、EUは日本より高く、11位の5.3%。
これからも分かる様に日本はすでに充分に、関税率の低い国と言えるのである。さらに低くしろというのは、国民を丸裸にするに等しい。

TPPは、「国家資格」の自由化を含んでいる。弁護士・会計士・税理士・美容師・医師・看護師・弁理士などの分野では、日本で資格を取らなくてもアメリカで同様の資格を取れば、日本で同じ職に就くことが出来るようになる。つまり、日本の国家資格の解体ということなのである。

すでにご賢察の各位にはお分かりの様に、日本の政財界がやっきとなってゴリ押しているTPPとは、アメリカの利益の為のものである。日本にはほとんど利益はない。それは、対アメリカへの自動車の輸出のパーセントを考えれば容易に理解できる話である。
安全保障を餌にアメリカが薦めるTPPの狙いは農業や自動車ではない。真のターゲットは「郵貯マネー」267兆円である。金融サービス分野なのだ。
ゆうちょ銀行の預金残高は174兆6532億円(2011年3月末)。簡易保険(かんぽ生命)の保険契約準備金は92兆8172億円。郵貯マネーはなんと総額267兆円を超えている。資金保有額124兆円超の三菱UFJフィナンシャル・グループよりも巨大な金融機関なのである。

2011年12月14日、米下院のTPPに関する公聴会でも、米国委員は「日本の郵政問題が重要事項」と語っているし、保険業界もターゲットとなっている。
TPP加入するとどんなことが起こるのだろう。まず外資による日本の保険市場への進出が加速。そして簡保、農協、共済は解体されることになる。庶民の味方・簡保は消え、高額な掛け金を払う外資保険会社が躍り出てくる。WTOが世界一と認めた「公的医療制度」は崩壊する。「国民皆保険」や「誰でも同じ値段で受けられる医療サービス」「全国に広がる医局制度」などの最終解体がおこる。
金のなる木である日本を、アメリカは絶対に離さない。今度のTPPをなんとかかわしても、手を変え、品を変え、次々に要求してくるはずだ。日本の恒久的な支配、完全植民地化が日本から金を吸い上げる為の長期戦略となる。
つまり日本の経済・社会・文化を変えてしまうアメリカの日本植民地化計画の総仕上げとしてTPPが存在しているとも言えるわけである。

しかしぼくは不思議に思う。こうしたことが有識者・政治家・官僚などに分からない筈はない。よほどのうすらバカでない限りは。
自虐史観と経済的自虐史観に染まりきった人たちは、よし気付いてはいても、守銭奴根性を捨てそこから脱出することは、困難なのだろう。アメリカの大学に学び、アメリカは素晴らしいというある妄想の中に日本人の誇りを埋没させてしまった人々。こうした戦後利得者と官僚の群れが日本を牛耳っていると考える以外に納得できる解はないようである。
(この原稿は、『言志05』所収の上村シーラ千賀子「黄金の国ジパングに群がるハゲタカと尖兵隊」を参考にしたものです。)