ベニスの片隅で蘇る、ずっと昔の気持ち(1996.11.1)

なんで山登らへんの 第19回 1996.11.1
体験的やまイズムのすすめ

 ヨーロッパから帰ってきてすぐ、ぼくはBMWのバイクを買いました。
 オランダのフリーウェイを、レンタルしたBMWのK75RTというバイクで走って、そのすばらしさに心底感動したからです。
 ぼくのZZR1100というカワサキのバイクだと、180キロほどもスピードが出ると、もう大変。激しい風にヘルメットは突き動かされ、必死に首の筋肉をかためるかカウリングの内側に突っ伏さないといけません。スピードメーターを見る余裕もないくらいになります。いくらメーターが320キロまで切ってあるとはいえ、それはほとんど飾りとしか思えません。
 ところが、この古い型のナナハンBMは、180キロを越えても首の周りはまるでそよ風、馬に乗った様な姿勢のまま実に悠然としたドライビングが出来るのでした。
 R1100Rというネイキッド(カウリングのない)BMWに乗ったナオトが、「やっぱりBMはちゃいますなあ」と感心しています。
 ずっと昔に試乗したBMWのバイクはこういう感じではありませんでした。「なんといってもやっぱりバイクは日本製」と勝手に思いこんでいた自分の不明を恥じる思いだったのです。
 その夜のバーベキューの椅子で、
 「日本に帰ったらBMWを買おうと思うんだ」というと、パベルは我が意を得たりという感じで、
 「ぼくは、きっといつか君がBMWのバイクを買うことになると確信していたよ」といいました。
 そばの奥さんが、「おとうさん、お金はどうするの」と尋ね、ぼくは思わず返答に窮したのです。
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