旗判定は覆るべきでないのか?

ロンドン・オリンピックの柔道の試合で、海老沼選手の判定がジュリーの判断で覆り、前代未聞と騒がれている。
少々因縁話めくのだが、一昔前の2000年のシドニー五輪の優勝戦での出来事で、世紀の大誤審といわれた事件があった。篠原選手が相手のドゥイエ選手が仕掛けた内股を内股すかしの返し技で投げドゥイエを仰向けに倒したが、ドゥイエが篠原の帯をつかんでいたため、少し遅れて篠原も横様に倒れる。一人の副審はこれを篠原の一本としたが、返し技の理解を欠く主審と副審の二人は、逆にドゥイエの有効と判定した。このため、篠原は金を逃すことになった。(これに関する記事はインターネットいまもインターネット上にあり、この時の動画はYoutubeで見ることができる)
このとき、山下泰裕選手団監督は、審判委員から審判団の再協議を申し出られたにもかかわらず、フランス語の分からない山下はそれに気づかず試合の継続を許してしまった。結局、試合時間が過ぎてドゥイエの優勢勝ちとなった。試合後、山下泰裕選手団監督及び日本選手一同が猛抗議したが、判定は覆らなかったのだという。国際規定で試合終了後の判定の変更は無いという条項があるからである。日本の選手団はフランス語の通訳かフランス語の分かる日本人を同席させておかなかったのは、不用意としか言いようが無いとぼくは思うのだが。
後でいくら抗議しても文字通り後の祭りなのである。
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いじめ自殺事件について(2)

table1大津市のいじめ自殺事件の報道は、なおも続いているのだが、先頃BS11のプライム・ニュースという番組で、この事件を取り上げていた。
政治問題などもゲストを呼んで、かなり突っ込んだ内容だったりするので、時々は見ていた。
キャスター2反町という難しい顔をした少々目つきの悪いフジテレビ政治部編集委員という肩書きのメインキャスターと、きれいな顔で賢そうな大島という女性のサブ・キャスターそれに解説委員の小林泰一郎の3名が局側のスタッフである。
「日本の教育現場、いじめの現状と対策」と銘打ったこの番組で、ぼくが興味を持ったのは、ゲストの二人がどちらも愛知県と関わりを持った人間だったことである。

戦後の日本の教育は、日教組と文部省の対立の中で、生徒を置き去りにしたままに進行して来たという事実がある。その対立の中で最左翼といわれ、民主教育の本山とされていたのは、京都であり京都教育と呼ばれた。一方愛知県はその反対の極にあり、京都で蜷川府政が風化崩壊した頃、京都府教委は校長候補生の教員を愛知県に研修に送って日教組つぶしを学ばせたりした。その愛知県からの二人のゲストである。

ゲストの一人、斎藤嘉隆氏の経歴に興味を持った。Wikipediaによると1991年愛知教育大学体育科を出て小学校教諭となったが、5年して1996年に名古屋市教組の執行委員となっている。2000年には愛知県の県教組の執行委員、2003年に連合愛知執行委員(連合というのは日本労働組合総連合会)、2007年愛知県教祖執行委員長連合愛知副会長、そして2009年教育委員会に移ると共にすぐ退職し、民主党に入って2009年佐藤泰介参院議員の地盤を譲り受けて、2010年民主党の一回議員となっている。
大学を出て、5年は現場の教員だったといえるが、以後は教員組合の専従教員で、ほとんど教育現場にはいなかったのではないか。京都では、組合専従になると授業はほとんどないくらい減免され、組合活動に専従するのが常であった。
番組の紹介にあるように20年間小学校の教諭だったという説明は、籍はあったのだろうが、少なからず嘘といっていい。また、教育委員会にも出向したという紹介も、嘘ではないが、それで教育委員会の実態が分かるとは思えない。教育センターというところは、教育委員会の管轄ではあるが、ちょっとした離れ小島で、例えば京都では、組合の強力なイデオローグなどを島送りする場所であったりした。だから、教育現場での経験と、委員会の実情が分かっているとも思えないのだ。
どんなことをしゃべるのか興味を持った訳である。

もう一人のゲスト、内藤朝雄氏。1962年東京都に生まれだが、愛知県立東郷高校を中退。同高校在籍時代は、愛知県各地で実施されていた過酷な管理教育の洗礼を受ける。この体験は、後の内藤のスタンスへ大きな影響を与えることになった、とWikipediaにはある。(おそらくいじめも体験したと思われる。TV画像の、その少々エキセントリックな表現をききながら、この人はほぼ間違いなくいじめを体験していると思った)。その後、通信制高校をへて山形大学へ、さらに東大大学院総合文化研究科に進学。博士課程取得後、明治大学准教授となり、東大と立教大の非常勤講師でもある。
『いじめの構造〜人はなぜ怪物になるのか』ほか、いじめ関連の本をたくさん書いていて、いじめ研究の第一人者とされている。

この対照的な二人がどんなことをしゃべるのか大いに興味を持った。
この番組を見ながら、教師だった昔が色々とフラシュバックし、バカかと思ったり、なるほどと感じ入ったりした。
番組の終わりがたに、斎藤氏が、いじめの問題はクラスで話し合って必ず解決できると、大昔の組合理論を述べ、内藤氏がそういう話し合いは、つるし上げの場になることもあるとちょっと反論するという場面があった。
むかし、「一人の悩みはみんなの悩み」というクラスの標語みたいなものがあって、職員会議でこの考えがやたらに教条主義的に強調され、みんなで話し合って解決しようと強制されるような場面があった。ぼくはそういう組合的な集団指導や集団主義には懐疑的だった。
教師になりたてのぼくは、60年代当時、まだあまり知られていなかったノンディレクティブ・カウンセリングの研究をしていたので、少々馬鹿らしくなって、こう発言した。生徒の一人が、ペニスが小さいと思い悩んでいたとして、そうした短小コンプレックスはクラスの話題になりますか。一同あっけにとられたようだった。
この辺りのことは、京都新聞連載の『いやいやまあまあ』の「問題生徒はぼくのカウンセラー」に書いています。
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石原都知事ワシントン講演、尖閣買い取り

尖閣問題が注目を呼んでいるが、尖閣買い取りは、東京都知事がワシントンのヘリテージ財団から招かれての講演で、このことを言明したことから始まった。
その講演とはどんなものだったのかと、興味が湧きYouTubeで聞いてみた。けっこ与太話めいたところもあると思えた。誰かの感想のように歴史に残る名演説などとは思わないが、十分に耳を傾ける価値のあるものと思えた。そこで、これを文字に起こすことにした。
動画では、飛ばし見というのは難しいが、文字ではとばし読みが可能である。

こんにちは。お招きいただきまして、ありがとうございます。
私は共産主義は嫌いなのですが、毛沢東が書物の中でなかなかいいことを言っている。それは矛盾論っていうのですが、要するに身の回りにある問題は従属矛盾ともいうべきものでその本体は背後にある主要矛盾ともいうべきものである。とそういっているのですね。あらゆる問題について、主要矛盾の解決を目指さないと本当の解決はないのです。
今世界は大きく動いていますが、大きな問題の一つは環境問題です。
40年ほど前に、あのブラックホールのホーキング博士が日本にやってきて公演をしました。そのときに日本の物理学者が、地球のように文明の進んだプラネットがいくつくらいあるかと質問したら、ホーキンスは200万と答えた。私はびっくりした。そんなにたくさんあるんだったら、下らんハリウッドの映画に出てくるような宇宙船がどんどんやってきてもいいではないか、おかしいではないかと質問したら、そら違う、地球ぐらいに文明が発達すると、循環が悪くなって宇宙時間からいうと瞬間的に消滅すると答えた。
それで私はその宇宙時間で瞬間というのは地球時間で何年くらいだと尋ねたら、彼は100年だと言いましたね。あれから40年経ったからもう60年しか残っていない。

もう一つの問題は、アフガンや中東で起こっていることで、これは結局キリスト教圏とイスラム教圏の争いじゃないんですか。アフガンではアメリカが主導して戦っているようですが、この戦いに勝てませんねえ、絶対に勝てないキリスト教圏の軍隊は。
私はねえ、20代の終わり頃ある新聞社に頼まれてベトナムに行きました。
それで最前線に行って、雨の中ポンチョを被ってゲリラを待ち伏せし、10人の内、7人を殺して帰って来たけれど、アメリカは勝てないと思った。他の国からの特派員も同意見でした。やっぱりああいう結末になりましたけれどね。

今起こっていることは、かつての十字軍の戦いと同じものです。それで、キリスト教圏の白人がアラブを含むイスラム教圏を支配して、それが独立して資源を得て牙を剥くようになった。わたしはこれは、別に良いとも悪いとも言いませんが、歴史の必然の大きな波だと思います。
これがどう終結するかは分からない。誰にも分からない。
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いじめ自殺事件について(1)

大津市の中学校いじめ自殺事件でマスコミが大騒ぎをしているようです。確かにけっこうショッキングな内容で、マスコミのみならず、インターネット上でも情報が飛び交っています。少し熱中してインターネットサーフィン(この言い回しって古い?)してました。
ほとんど条件反射的な情動に駆られたいいたい放題の悪態メーセージは論外として、たとえば「大津市中学生いじめ事件「自殺の練習」の衝撃―Twitter上で共感を呼んだツイート集」などに取り上げられているツイートなどは、けっこう納得できるものが多々ありました。Twitter上で共感を呼んだツイート集
特に記憶に残ったのが二つありました。
「絶対にミスが許されないプロジェクトは、絶対にミスが報告されないプロジェクトになる」
もうひとつは、「いじめられたら、その人の顔写真その他の情報を記録しておいて、就活時期にインターネット上で暴露しましょう」という陰険なもの。
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またマズッタのか日本外交

尖閣問題が大きくなっている。
ことの起こりは、石原都知事の尖閣の3島の買い取り発言だった。
共感を示した国民から続々寄金が集まり、その額は12億円を超えたようだ。
中国は当然反発をした。
そのまま放っておけば、中国は日本に回答を求めてきただろう。
その時、領土問題は存在しないとしてきたのだから、政府はこう答えればよかった。
「いや、これは国内の問題ですから、国内の売買に関しては国が口出しする気はないのです。国内問題には、口出しはしないで頂きたい。」
そう突っぱねればよかったと思う。
ところが突然、浅はかにも、国が買い取りたいなどと言い出した。
これによって、領土問題はないという立場を失うことになってしまった。
少なくとも、尖閣は領土問題と国際的に認識される結果となったのではなかろうか。
さきのG20でも、野田首相は中国との首相会談で1時間も待たされてじっと待っていたそうだ。
15分待って来なければ、席を立つべきだったし、それが常識ではなかろうか。
日本の外交音痴とも言うべきことが多すぎるこのごろである。

[追記]
今日の国会中継で、尖閣問題での丹羽中国大使の発言(都知事の買い取り宣言は日中関係に禍根を残す問題発言と表明)に関して更迭が必要だったのではないかとの質問があった。これに対して玄葉外務大臣は「本人は大変反省しているから」と答弁した。これは既に政府の対応だったのだが、これもまた外交音痴あるいは慮外者的思考なのである。
問題は、本人の反省如何という次元のものではない。
国会やマスコミでいくら政府はそう考えていないといっても、それは中国や外国には伝わらない。大使の発言が問題であるとするならば、直ちに呼び戻し更迭、あるいは減給その他の処罰をし、それを公表することによって初めて政府の意図が外の諸国に伝わるのであって、慌てて打ち消し弁解しても何の意味もないのである。
高校の生徒会ではないと言いたいくらいである。

映画『ミルク』と『ブンミおじさんの森』を観る

トルコのセミフ・カプランオール監督の『ミルク』を観た。
カプランオールの「ユスフ3部作」として知られる『卵』『ミルク』『蜂蜜』の2番目に創られたものである。
『卵』は壮年期、『ミルク』は青年期、『蜂蜜』幼年期のユスフを描いている。
ユスフの人生を昔へと遡る形で映画が作られたということである。最後の6歳のユスフを描いた『蜂蜜』は、2010年ベルリン映画祭金熊賞受賞を受賞してカプランオールの名は世界に知れ渡ることになったのだろう。
金熊賞といえば、宮崎駿さんが『千と千尋の神隠し』で2002年に受賞している。
ぼくは先頃、なんの予備知識もなく、金熊賞受賞作であることさえ知らず、この『蜂蜜』をみて、自分の幼年期の思い出を呼び起こされたからだと思うのだが、激しく心を揺り動かされ、「映画『蜂蜜』を観る」を書いた。

冒頭のカット。このフレームは2分30秒ものあいだ動かない

『ミルク』は、こんな冒頭のシーンから始まる。
ヒゲの老人が椅子に座り何やら書き付けている。やがて遥遠方に3人の若者と女ひとりが現れたのが、アウトフォーカスながら分かる。
やがて若者たちは近づいてきて、薪を運び去る。この間、男は細かい字を書き続けているのだが、このカットなんと2分30秒ものあいだ微動だにしないのだ。
どんな展開になるのか全く予想もできない。

中央の棒状のものが逆さ吊りにされた女

2分30秒が過ぎてカットが変わり、大木の下の場面となる。焚き火の上の鍋には、湯気を立てるミルクがある。
男たちは木の枝にロープを投げ上げ、鍋の上に娘を逆さ吊りにする。一体何事なのか。

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これまた国家的詐欺ではないのか

画面右上にうっすらと「デジアナ」の文字が見える

先の稿に載せた動画の上の部分の黒い帯の右に「デジアナ」という表示があったのに気付かれただろうか。
あの動画は、地デジには対応していない古いDVDレコーダーで録画したものです。
テレビもDVDレコーダーも、地デジ対応でなくても、古いもので2015年まではちゃんと受信できるのです。
このことについては、すでにこの『葉巻のけむり』に書きました。アナログ機器で地デジが見れる
繰り返しになるかもしれないのですが、これはケーブルテレビ局の「デジアナ変換」によるもので、デジタル波を変換し、アナログテレビでも視聴できるようにしている訳です。

総務省が地デジの受信環境を整備するため、昨年から、自治体や民間企業などのケーブルテレビ事業者に導入を求めてきた。
このサービスで、2015年3月末まではアナログのテレビでも普通に地デジを視聴できるという。
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「ございます」が消えた

前の稿で、関西電力の答弁の「ございます」について書いた。
この答弁は、6月24日の「報道ステーション」での関西電力岩根副社長の答弁だった。
この同じ画面が翌25日に「モーニングバード」でも放映された。しかしここでは、「ございます」は全く消えていた。「おまっています」もなくなっていた。
より簡潔に編集したということなのだろう。
下の動画を見てみよう。
関電答弁(報道ステーション)
このしゃべりを忠実に再現すると次のようになる。
<現時点で2030年で何%が適正ということは、あの申せません。
11基の原子力発電所がですね、全部止まればですね、9000億円というですね、膨大な、え~燃料費および代替コストが発生するという風に考えてございます。え従いまして今後合理化等も考えてございますがやはり相当の原子力(発電所)が再稼働しなければですね、え~持続的継続的な経営は難しいという風におまっております。>
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東京電力の「ございます」

3.11以後、何度も行われた東京電力の会見で、バカ丁寧というか、ちょっと普通は使わない言い回しとして、「〇〇〇〇ございます」というフレーズが多用され、大変気になっていました。
それで、これについてこの『葉巻のけむり』に書こうと思って、実例を引くべくYouTubeを検索してみたのです。多くの会見の映像があったのですが、そうした「〇〇〇〇ございます」というフレーズを見いだすことができませんでした。どうしてかと考えて気づいたのですが、この言い方は技術関係の人はしないということなのではないかということだったんです。

そんなことで少々困っていた時、全国の電力会社の株主総会が同じ日に一斉に開かれたという報道がありました。これは、反対派を分散させようという作戦だったようです。
東京電力の株主総会では、猪瀬東京都副知事が質問にたって、東京電力病院がどうして資産整理のリストにないのかを追求しました。TVが報じるその東京電力病院の内容は聞いて本当にびっくりするようなものでした。

この病院は、天皇陛下などもご利用になられる慶応病院の横にあるそうなのですが、どの病院にも見られるビル壁面に病院名の表示がない不思議な1700坪の大きな病院です。1951年に”職域病院”として開設されたそうです。東京電力の福祉厚生費によって運営される社員のための病院で、社員とその家族とOBのみが利用可能で一般患者は対象外で診てもらえません。
診療代は給料天引きでOBには、後で請求書が郵送されるということになっている。
ベッド113床のうち、稼働率は20%。運営の費用は福利厚生費から出ており、それは電力料金に上乗せされている。
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