ここしばらくの間、といっても、それは年単位の話なのかもしれないのですが、いわゆる眉唾の話が多すぎるような気がします。
だから、この「眉に唾つけて聞く話」はシリーズ化できると思うほどです。
「日本の公務員数は多すぎる」という話を聞くことがあります。しかしこれは「眉唾」というより大嘘です。下の図を見てください。
世界で最も少ないんです。だから専門家と言われる人は、根拠と数値を挙げて言わないといけないと思います。ぼくたちは、データから語らない似非専門家やバカなコメンテータを信じてはいけないのです。まづは、眉につばをつけてから聞くことにしましょう。
ある肩書きの人が、データを調べもせずに気分で言ったことがそのまま繰り返され、やがて固定化され、そして常識みたいになります。
「日本は借金大国」これもよく聞く話でした。だからそのうちギリシャのようになる。何度も聞いたか分かりません。まあ、ギリシャになるというのを信じる人はないとしても「借金大国」、つけを子孫に残してはいけないと思う人は多いんではないでしょうか。
日本の国はお金を借りている。だから国民一人当たりの借金は一千万円以上になる。誰でも驚きます。
でも、でも自分は一体誰からお金を借りているのですか? 借金大国と言い募っているコメンテーターに、そう聞いたらどう答えるのでしょうか? 多分直ぐには答えられない。そして、外国からと答えるかもしれません。違います。外国にお金を貸しているかもしれませんが、借りてはいません。
日本の国がお金を借りているのは、国民からです。つまり国民がお金を貸しているのです。だから、一人一千万以上の借金を抱えていて、それを子孫に残してはならないなどと言うのは、間違っている訳です。こちらは、金を貸している方です。借金などしていない。
債権者を負債者と言いくるめるこの言い方が横行するのがどうしてなのかは、ぼくには分かりません。でも、世界一の金持ち国と言われる日本人が借金浸けになっているなどというのは、理屈に合わないと思うだけです。
こんなことを言い続けられている国民が、お金を使う気になる訳がない。デフレは進行する、ということになります。そうやって何十年も過ぎたのでしょう。
インターネットで、とんでもないサイトを見つけました。気分が悪くなりました。「日本の借金時計ー財部誠一ー」というサイトです。
この財部と言う人、報道ステーションなどで見たことがあります。個人的には、内緒の話、ちょっと胡散臭さを感じていました。話がかっこ良すぎるのも気になっていました。今インターネットで調べると、盗作疑惑が持ち上がっているようです。
そんなことより、中国進出のバラ色の未来を喧伝したのはこの人のようですが、中国経済が低迷し、進出した企業が立ち往生している現在、その問題に我関せずと知らんぷりを決め込んでいるとしたら、これは許せない人非人と言うべきでしょう。少なくとも、脱出の方法などのノウハウを調べて公表すべきです。進出の成功例を調べて発表したと同じように。そうしたことがお金にならないとしてもです。
こうしたデフレビジネスを生業とする人は、世の中が好景気にわかない方が本もよく売れるのかも知れません。
いずれにしろ、この借金時計のサイトはなんとかしてほしい。あるいは誰か、財部誠一の寿命時計を作って、残りの寿命を表示してやったらどうでしょうか。この人は、経済のプロではないと感じていましたが、法学部出身のジャーナリストで、なるほどと思いました。
こんな男が誇らしげに作った馬鹿げたものを真剣に見つめている限り、絶対にデフレ脱却はできない。そう思います。どうしてか。少し説明がいるでしょう。
学問というか科学は、その対象は自然であって、自然を征服するためにそれを探求しようという目的で生まれた学問だったと言えます。だから、ド・ソシュールが始めてヨーロッパの最高峰・モンブランの頂上にたどり着いた時、最初にしたことは、お湯を沸かして水の沸点を測定することでした。その時、その横で別の人が同じことを行っても同じ温度になる必要があります。
ピサの斜塔から大小2つの鉄球を落として、それが同時に落下することが目視されるまでは、大きい方が先に落ちると信じられていました。ガリレオ・ガリレイは、イタリアのピサにある傾いた塔という絶好の場所を選んでこの実験を行った訳です。
別の人が、鉄球の代りに布切れを落としたとしたら、それは鉄球と同時にはつきません。そこで、ガラス円筒に針金と一枚の羽毛を入れて、その中での落下を観察すると、針金が先に落ちる。ところが、中の空気を抜くと同時に落ちるようになる。つまり空気の抵抗という条件を除いて始めて正しい結果が得られるということも実験で分かる訳です。
つまり、実験の結果から結論付け、法則を見いだすためには、反復が必要であり、誰がやっても何回やっても同じ結果がでる必要がある訳です。リンゴの落下は物体落下の対象になっても、一枚の葉っぱの落下は基本的な意味において、自然科学の対象とはならないのです。
それにしてもこのように、種々様々な実験によって、自然界の真理が解き明かされて来ましたし、それがまた以後の世紀の文明の発達を支えた訳です。
そして、この自然科学に引っ付いた形で社会科学とか人文科学などという学問分野も生まれて来たのです。
この世にある有限な資源をいかに分配するかを考えるという経済学は、社会科学という分野に分類されますが、それは厳密な意味での科学ではないと思います。なぜなら、実験は出来ないし、誰がやっても同じなどという再現結果の検証などどだい無理な話です。
従って、そこにある理論などというものは存在しないとぼくは思っています。一種の経験則みたいなものはあるのでしょうが。しかし、学を名乗り、社会科学分野におかれている以上、科学の形式を取りそれに従う必要があります。
そこで、人間の経済行動を研究する場合、こういう場合にはどういう行動をとるのだろうかということを推定しながら論を進めたり、仮説を立てたりする訳です。この時に、仮に設定されるのが「経済人」というモデルです。しかし実際の場合、すべての人がそんなモデルで考えられたような行動を画一的にするでしょうか。どだい無理な話で、経済学の論理や結論などというのは、イデオロギーや政治に絡んだいかがわしいものでしかないというのがぼくの考えです。
そういう意味では、経済政策などというのは、すべてはそれ自体が実験なのです。そもそも経済というもの自体、大規模な社会実験と言ってもいい。だから資本主義的実験経済だったり、社会主義的実験経済だったりします。人間という生き物の活動としての経済も生き物なので、時代や社会状況で変化します。その中から、その時に都合の良いものを選び取るということが商いです。
もっというと、国家というのは、商いの一つの枠組み構造ともいえる訳で、みんなが儲けたものから「税金」を吸い上げて、食べて行くのが「国家」で、その代わりに国民の生命や安全そして財産を守るということを担保にしているという訳です。
「グローバル化は世界の趨勢」とか「自由主義経済」「規制緩和」これもよく聞く言葉です。
20年前頃からアメリカで盛んに喧伝されたといいますが、今はもうとっくに終わっていて、そんなことを唱えているのは日本だけのようです。逆説的な言い方をすれば、「グローバル化しないのが、グローバル・スタンダードとなっている」となります。
今世界は、経済的に大変苦しい状況になっています。中国だけがバブルを演出し、その崩壊後も、その国柄を使って上手く隠し、世界を引っ張るような形を取っていましたが、それも限界でぼろが出始めています。
そうした世界情勢の中で、先進国が保護主義的傾向を強め、社会主義的色彩を増しているといえるでしょう。
アメリカの先の選挙で「新自由主義」を唱えるロムニーが敗れ、2012年のフランスで社会主義政党のオランドが大統領になったのも、この流れを象徴していると見れるでしょう。
日本の円高政策によって、その恩恵をほしいままにして来た韓国・中国はアベノミックスによる円安で、ひどく痛めつけられて来ており、それがまたいわれない攻撃となっているともいえるようです。
現代の戦争とは、砲火を交えない経済分野での戦争ともいえると思います。
この20年にも及ぶデフレ経済に苦しんだ日本は、それを脱却するために色々と手を打って来たといえます。しかし結果として効果はなかったといえないまでも、デフレを抜け出ることは出来なかったということです。
この国を一人の病人に例えるとこうなります。
大変優秀で賢い日本人は、外国人にやっつけられそうになると神風が吹いてことなきを得て来た。世界一強いとされたバルチック艦隊を完膚なきまでに破って世界に躍り出たのだが、各国の警戒心と反感からいじめにあって、戦争に誘い込まれた結果、始めての敗戦を経験した。それから争いは絶対に避けるべきだと教え込まれて心底虚弱児となった。強くなるための薬を求めてありとあらゆる医者と病院を経巡った。しかしどんな薬も効くことはなかった。
そのうちに、これはもしかしたら、心の病であり、心療内科の医者が必要なのではないか。
つまり、このような状況から抜け出せないのは、その心の状態、つまり自虐史観なのではないだろうか。そしてそれとセットされた自虐経済観ではなかったのだろうか。と思い至ったのである。
自虐史観が及ぼす影響はとんでもなく広範囲に渉ります。自虐史観で塗固められた国に進歩発展はないといえます。今日の草食男子の発生の原因を、自虐的歴史教科書に求める人もいるくらいなのです。
心療内科の患者が治るのは、薬ではありません。気の持ちよう、自立・自助の心構えが必要です。だから、アベノミックスを新薬や特効薬と考えて、その効き目をあんじるのではなく、国民自らが気分を持ち直し、つまり日本の将来を信じて未来に投資したり、飲み食いをする。それが肝要なのだと思うのです。国民の気分が変わることが景気の本質だと思います。
時あたかも、TPPの問題が降り掛かりました。これは、アメリカが経済の立て直しを目論んで、むかし自分たちも失敗している規制緩和を求めて来ているというのがその真相だと思うのです。ターゲットは、日本の金融と投資の2分野です。
TPPに於けるアメリカの真の狙いは、この2分野で普通いわれているものではないようです。それは、アメリカが後から参加した時に、この2分野を加えるように要請し認められた経過があることから分かります。これらについては、稿を改めるつもりです。
日本をまともな国にする。まともな国になれば対等な経済交渉も出来るし、それがまた日本を強くすることにもなる。そういう日本強靭化スパイラルの実現になると思うのです。
たしか、以前のどの稿だったか忘れたのですが、「自虐史観からの脱却こそが、じつはデフレ不況からの脱却につながり、アベノミックスの成功につながる道なのだとぼくは思っているのです。」と書いたら、読者の一人が、どうしてそうなるのですか?と質問して来ました。
ここに書いたことで、そのご質問の答えになったでしょうか。
この記事を書き終えてから見つけたのですが、こんな記事を見つけました。参考までに。
日本国政府がどれだけ借金しても絶対に日本は倒産しないと言うことのサルでも分かる説明