アメリカ大統領の予備選挙・スーパーチューズデーで勝利したドナルド・トランプ氏のスピーチを聞いた。
立て板に水とはこのことだ。一気呵成に喋りまくる。原稿などは一切見ない。
オバマなどは、一フレーズごとに間をおいて、聴衆の反応を確かめるような感じなのだが、トランプは違う。ともかく喋り通すのだ。普通の場合、原稿を書く人いわゆるスピーチライターと言われる人がいるのだが、トランプ氏はそういう人をクビにしたと自慢しているということも聞いた。本当かどうかは知らないのだが。
ともかくそのスピーチの動画テロップを文字起こししたものをここに挙げてみる。
今日は素晴らしい夜だ。すでに主要な州の5つで勝った。あと6、7、8、9・・・勝てそうだ。
我々は再びアメリカを偉大な国にする。
この国は深刻な危機にある。我々は貿易で完全に破壊された。
中国は我々を出し抜いている。私は中国を尊敬しているが彼らの指導者は私たちのリーダーより賢い。
5兆ドルの貿易赤字は膨大すぎてどんな国でも持ちこたえられない。
でも私のチームにはすでに優秀なビジネスリーダーがいる。
貿易協定は私が立派にやり直そう。
メキシコは国境で我々に打撃を与えている。アメリカの企業はどんどんメキシコに移っている。
フォードやシカゴにあったナビスコもメキシコに移っている。
でも私なら止められる。私が雇用を創出する。
私には友人が賞賛する減税案がある。
我々はこの国で忘れられてきた中流階級の減税を実施する。
我々が愛し、誇りに思うこの国の現在の姿を作り上げたのは中流階級だ。
忘れられていた中流階級とビジネスに対する税金を下げる。
ファイザーがアイルランドに行き他の多くの企業が出ていっている。
以前は国内で移動していた。
クリスティー州知事も理解しているように企業は海外に移っている。
我々は製造業を失い何百万もの雇用が失われた。
何千万もの工場や倉庫、あまりに多くのものを失ってきた。これは許せない。
掘削業をする友人は、以前はキャタビラーを使っていたが、日本のコマツのトラクターに変えた。
円安誘導のせいでキャタピラーは対抗できなくなった。
私はそういう行為を許さない。
イスラム過激派のテロリストたちは大きな、大きな問題だ。
我々だけでなく、ドイツでも、スウェーデンでもブリュッセルでも・・・あちこちで大惨事が起きている。
我々は、何者かわからない人間を国に入れるわけにはいかない。
どこから来たかも分からず身分証明書もなく・・・
移民の例を見たら若くて、屈強で、パワフルだ「なぜ国のために戦わない?」と疑問に思う。
でも、私は寛大な心の持ち主なのでシリアに安全な居留地を作る。
誰よりも金を持っている湾岸諸国に財布の紐を緩めてもらう。
彼らは難民を受け入れないが・・・。我々は湾岸諸国に支払わせる、当然だ。
信じられない人もいるかもしれないが、私は皆をまとめられる人間だ。
この予備選が終われば、私が狙うのはただ一人ヒラリー・クリントンだ。
私がこれほど支持を受けている理由を考えてみると・・・
中流層が12年前より収入が減っているからだろう。
ヒラリーは演説で「収入が減っている」といったがその間ずっとオバマといたじゃないか。
なぜ何もしなかった?
彼女が文句を言っていたことはほとんど私の発言から拾ったものだ。
違いはヒラリーが長年そこにいたことだ。なぜ何もしなかったんだ?
世論調査を見れば、私は多くの調査で彼女に勝っている。
ルビオが彼女に勝てるかわからない。クルーズも厳しいだろう。
私たち共和党はずっと良い党になり、まとまりのある党になるだろう。
正直に言うと、もっと巨大な党になるだろう。
当初泡沫候補のように言われていたトランプ氏の人気が出てくると、マスコミも識者とされるコメンテーターも口を揃えて、いやそのうちに消えると言っていた。
その頃からぼくはすべての人が、どうしてあまりに一方的に彼をこき下ろすのだろうと少々の違和感を抱いていた。
確かに安保同盟の同盟国ではあってもよその国の話ではないか。ぼくの友人の一人は、安保条約を否定しているような男でですよ。日本を守ってくれないでしょうと言った。では、他の候補なら守ってくれるのか。このあまり正常ではない日米安保という同盟には抑止効果はあっても、いざ本番になっても体を張って守ってくれると考えるような日本人は余程のお人好しか、日本のことを自分のこととして考えられない甘えた他力本願のダメ日本人だとぼくは思っている。
自動車を買ってもらえなくなる。経済的損失が大きいとも彼は言った。それがそんなに大問題か。日本車はほとんど米国内で作られているのと違うのか。アメリカだけと貿易やってるわけじゃないだろう。とぼくは思った。
メキシコの移民を入れないと言ってる。とんでもないではないか。
どうして? 不法移民を入れないというのは当然の話ではないか。国には国の主権がある。その国の独自の主権より不法移民の人権を優先するなどおかしいではないか。
そう、人権やら自由やら民主主義やらの口当たりの良い、誰も反対できないような皮をかぶせた自分たちだけが利を得る経済的功利主義を世界中に広げているのがアメリカであり、そのグローバリズムなるものの元凶はアメリカのウオール街にいて、そのカネをもらって選挙戦を戦っているのが、ヒラリー・クリントンたちなのだ。そうぼくは思っている。
このグローバリズなるおぞましきものは、小泉政権の時、構造改革として我が国に持ち込まれた。そして日本のみならず、グローバリズムは世界中の貧富の差を増大させた。アメリカから日本からも中流層が消えた。
中国包囲網という戦略的な意味合いも大きいとして、強力に進められたTPPはその内容がほとんどわからない密室の中で進められ、成立に近づいた。
アメリカのグローバル資本がターゲットとするのは、間違いなく、世界一の金持ち国の日本のお金なのである。TPPの真の狙いはここにあることを知る必要がある。お金が少々奪われるのは我慢できるとしても、日本の根幹をなす独自の国の形やモラルなどまでが変えられてしまう危険がある。
だからぼくは最初からTPPには反対なのである。TPPは成立に近づいたと言っても、各国が批准しなければならない。安倍政権が閣議決定をすると決めたそうだ。どうしてこんなものを先走って批准しようとするのか。
あまりにもタイミングよく甘利大臣の賄賂問題が起こった。あまりに都合が良すぎるではないか。密室での決定の経緯を知るのは甘利氏だけではないか。自民党のTPP推進派は内心ホッとしたのではなかろうか。正直な甘利氏が詳細な内容を国会で話せば、TPP交渉に入る前提条件としていた多くの事柄が、必ずしも守られていないということが明白になるからだ。それだけではなく、4千ページにも及び、国会議員といえどもほとんどが知らない不都合な部分がつまびらかになってしまう。
それにしても、トランプ氏のこの人気はどうだ。誰も予想し得なかったと言っていい。上にあげたスピーチの冒頭で彼は、「あと6、7、8、9・・・勝てそうだ。」と言っている。その後、言った通り今や10州になったようだ。
誰も予想し得なかったことが起こった。前例のないことが起こったということである。
つまり、世界は誰も予想できない状況のもとにあるということである。
トランプは明らかにグローバリズムに異を唱えている。ウオール街のお金を当てにしていないし、自前の選挙を売り物にしている。当然TPPに賛成であるわけはない。TPPなる歴史上初の巨大な条約・協定は、21世紀の怪物とも言えるグローバリスムそのものなのである。
TPPは参加国の国会が承認して批准が行われなければ発効しない。
トランプは、明らかにクリントンを対抗する標的と捉えていることは、「この予備選が終われば、私が狙うのはただ一人ヒラリー・クリントンだ。」と言っていることからも明らかだ。
そのクリントンは支持拡大のためにトランプの主張に歩み寄りを見せている。当初TPPに賛成だったクリントンも微妙に変化してきているようだ。
ぼくがトランプに勝って欲しいのは、TPPが塩漬けになるのに一縷の望みをかけているからである。
安倍総理も、アセアン諸国に範をたれようなどと先走って、小泉政権のイラク戦争の時のように急がないで欲しいと思う。
この予見不可能が世界中に蔓延する中では、十分に先刻ご存知だとは思うのだが、じっくりとした様子見がぜひ必要なのだとぜひ知って欲しいものである。