「国際連合(国連)」という誤訳

 先稿で、トランプ大統領国連演説の翻訳をアップしました。
 つづいて、その内容についてコメントしたいと思っているのですが、その前に、少々国連について述べたいと思います。
 国連は「国際連合」をつづめた日本語なのですが、この国際連合なる組織は、世界中どこにも存在しない。それは日本人の頭の中だけに、空中の楼閣として存在するといえます。
 というようなことを、皆さんご存知でしょうか。

 「国際連合」はUnited Nationsの訳語です。つまり誤訳です。正しくは連合国と訳さないといけない。ドイツ・日本・イタリアと戦った「連合国」なのです。
 いまから80年ほどまえのことでした。
 その時、今の日本のように「今だけ、金だけ、自分だけ」の国でなかった日本国は、誇りをもって、大強国アメリカに立ち向かうべく真珠湾を強襲しました。
 それは、昭和16(1941)年12月6日のことでした。1ヶ月もたたない翌年の1月1日に、米国のルーズベルト大統領が日本ら枢軸国と戦っている諸国をワシントンとに招集して、「以後この軍事同盟をUnited Nationsと呼ぼう」といいました。これが「連合国」の始まりでした。

 この大戦の終わり方、沖縄戦の最中、アメリが中心となって戦後の世界を管理する世界機構を作る会議をサンフランシスコに招集します。この国際機構も「連合国(United Nations)」と呼ぶことになりました。
 日本の新聞も敗戦の年の10月までは、「連合国」と正しく呼んでいましたが、11月になると、突然「国際連合」と呼ぶようになりました。
 どうしてそうなったのかは、判然としませんが、連合国という言い方は敵方視しているようだからよくないという、外務省の忖度ではないかと考えられています。
 しかし、いかにも世界的な公正さを持った国際組織という誤解を日本中に広め、それが今も続いている事実は否めません。

 外務省の誤訳に関して、今述べたUnited Nationsよりもっと重大とも思える誤訳があります。
 それは、サンフランシスコ講和条約の中で、戦争犯罪について述べられた第11条にあります。
 「日本国は、極東軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の判決を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。・・・・・・・・・・・」
 問題は、ここの「判決を受諾し」という部分です。これを外務省は「裁判を受諾し」と訳しました。原文はJudgementsです。Judgemenntには、確かに裁判という訳もありますし、他の犯罪法廷を含めたからという見方も可能です。しかし、外務省の何か特別な意図が疑われるところでもあります。
 そして、今に続く歴史的に特異な東京軍事法廷の考え方とそこで作られた捏造を肯定する見方を固定化する働きを果たしてきたと言えます。
 安倍首相をはじめ、日本国民の多くが東京裁判史観と呼ばれる偏ったとも思える考え方に囚われる結果を産んだとも言える誤訳だったと思えます。

 80年も経った「連合国」は今も「United Nations」のままです。
 トランプ大統領演説の原題も「Remarks by President Trump to the 74th Session of the United Nations General Assembly」と、変わらずちゃんと「the United Nations」になっています。
 日本でいうところの国連であれば、それはInternational ConfedirationとかInternationa Coalitionとかになるはずです。まあ今では、和英辞書でも国連はUnited Nationsとなっていますから、ぼくの考えは老いの繰り言になるのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください