昔は、原稿は原稿用紙に書いていました。まだパソコンなどない時代のことです。文房具店には必ず400字詰めの原稿用紙が置いてありました。
でもぼくが使っていたのは特製の自前のものです。印刷屋さんに作ってもらいました。それは少し変わったものでした。こんなものです。その原稿用紙は、左右の空白と上下の空白がそれぞれ同じ長さになっていました。左下と右上の空白には、「高田直樹専用」の文字があり、右上のものは上下が逆になっていました。
この原稿用紙では、用紙を一切無駄にすることなく、差し替え切り取り挿入などが出来ました。まだパソコンやワープロのなかった時代にぼくはアナログでコピペーをやっていたことになります。
この便利なやり方で執筆を続けていたのですが、そのうちにデジタル化が進み、原稿をメール送信できるようになりました。
しっかりした記憶はないのですが、多分その頃ぼくは、ワープロの原稿用紙モードを使って書いていたと思うので、それをまずプレインテキストに変えて送信していたはずです。
ワープロソフトは各種ありましたが、ぼくはWindows用のものは使わず、もっぱらマック用のものを使っていました。
そのうちにファイル送信が普通になってきて、パソコン上で書いたテキストをそのまま送信するのが普通になってくるとともに、ぼくももう原稿用紙モードで執筆するということも無くなってゆきました。
そんなことなっていた最近、どうしたわけか急に原稿用紙に書き込んでみたくなったのです。とはいっても、それはパソコン上のことです。オンライン上にあげる文章であるならば紙の原稿用紙に書き込むというのはとんでもない二度手間です。
早速マックのWordで原稿用紙モードを探したのですが、これがないのです。Wordのバージョン11までは在ったらしいのですが、今では無くなったことがわかりました。
原稿モードで書き込む[/caption] 色々探してらしき物を見つけて、やってみてうまくいかない、ということを繰り返した末にようやく見つけたのが、iText Expressというソフトでした。これには原稿用紙モードがあり400字詰めのサンプルも用意されていました。
ところがこれで一件落着とはならず、プログを書いているWordPressでも縦書きをやってみたくなりました。縦書きのプラグインがあるということなのですが、これもうまくゆかず数日かかってようやくなんとか成功しました。
タイトルを太字にしたり行間を調整したりというようなことはまだ出来ず、課題を残してはいますが、なんとか完結した気分になって安定したわけです。
考えてみれば、昔のようにモンブランの太い万年筆を手に、ブルーブラックのインクの香りを感じながら原稿用紙のマス目を一字づつ埋めていくあの感覚を取り戻せたわけでは決してないのです。
ほとんどの書籍は縦書きであるし、日本語の表現に縦書きは必要であると思われます。日本語を縦書きにするのは一つの文化であるし、英文字が多く混在する文書を除きすべての日本の文章は、縦書きであるべきだと感じています。