TPPの深層

 TPPはTrans Pacific Partnershipの頭文字を取ったものであることは誰でも知っている。
 日本語では、環太平洋パートナーシップ協定、環太平洋経済連携協定、環太平洋経済協定などと訳されているが、transには環という意味はない。環太平洋なら、Circum-PacificあるいはPacifice-rimだろう。

CisTrans1CisTrans2 transといえば、化学が専門のぼくは、シストランス異性体という術語が思い浮かぶ。分子量は等しいが性質が異なるという異性体のうち、原子の位置が異なるシス型(cis-)とトランス型(trans-)位置異性体である。
 つまり、これは環太平洋と名付け、いかにも多国間協定然とした命名がされているものの、原語の意味する所は日本とアメリカという太平洋を挟んだ二国間を意図した協定なのであって、そこに米国の意図が見えるのではなかろうか。

 アメリカは、これまで2度に渉ってグローバリズムを唱え進めたが、いずれも失敗した。最初はIT革命と称してドルの還流を計った。次は住宅バブルを起こしたが、サブプライムローンのまやかしの露呈におわった。景気回復を意図して、金融緩和と財政出動を繰り返したが経済は好転しなかった。
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