11月21日、衆議院の解散が行われた。
その模様は、かなり詳細に映像として報道されたといっていい。
解散の進行は次のように進行することになっている。
まず閣議決定が行われる。閣議決定というものには、全大臣の署名が必要である。小泉内閣の郵政解散の時、一人の閣僚が署名を拒んだので、小泉首相はその大臣を罷免し、自分が兼務することにして署名を埋めたという。
解散の詔書には、国事行為としての天皇陛下の決済が必要で、天皇は解散詔書に「明仁」と署名を行う。そして、天皇の御意思を受けて侍従が、詔書に御璽を押印して、解散詔書が出来上がることになる。
この詔書は国会に届き、黒塗りの盆に紫の袱紗にくるまれて、内閣官房長官から衆議院議長に手渡されることになる。
解散は当然のこと、閣僚の任命にも天皇陛下の決済が必要なのであって、天皇がいなければ日本国は動かない仕組みなのである。
「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する。
御名御璽(ぎょめいぎょじ)
平成26年11月21日 内閣総理大臣 安倍晋三」
このテレビ中継を一緒に見ていた家内が「ぎょめいぎょじってなに?」と尋ねた。
ぼくは驚いて、「御名御璽も知らんのか」といった。初めて聞いたという。
なぜかぼくは、「教育勅語」の暗唱を強要された記憶はないから、もっと上の年代の人のように全文を諳んじている訳ではないけれど、冒頭の「朕惟フニ我カ皇祖皇宗(ちんおもうにわがこうそこうそう)」と最後の「御名御璽」はしっかり覚えている。
戦後、学校でこうした言葉を教えることはなかったし、テレビでも報じられる機会はなかったのではなかろうか。 御璽とは天皇の公印みたいなもので、「天皇御璽」と掘られている。
御名とは天皇陛下のことであり、御璽とは署名のことである。だから、天皇陛下のサインの下に「天皇御璽」の印を押す訳で、これは、明治政府の発足時から変わっていないはずである。教育勅語や敗戦の詔勅にも同じものが用いられた。
この御璽は、金印で3寸(9.09cm)の方形で、重さは3.55kgあるという。
「天皇陛下の御意思をうけた侍従が押印」というのを知って、自分ではお押しにならないのかと思ったのだが、この重たさでは、押すのも大変なのだろうと思った。
今回の解散の国会中継は、テレビ局各社が報じていたから、ぼくは録れるだけ録画してみた。それを見比べてみて、ほとんどが、編集されていることが分かった。
実際のものは、伊吹議長が「解散する」と言い終わるやいなや、議長席に向かって左側の自民党若手議員たちの「万歳三唱」が始まる。伊吹議長はそのまま、それが終わるのを待ち、大声で「御名御璽」と叫ぶように言い、「平成26年11月21日 内閣総理大臣・安倍晋三。以上です」。そして、「万歳はここでやってください」と告げると、万歳がわき起こる。つまり、二回の万歳三唱があった訳で、これがいわゆる「万歳のフライング」なのである。
「解散する」のあと、一回目の「万歳」はなく、やや間を置いて、大声の「御名御璽」そして、万歳。別のものでは「御名」で切れて、テロップが「御名」とだけ出るものもあった。どうして、御名御璽をちょん切ったのか。いぶかしく思い、不快感を覚えた。
たまたまぼくは、最初に生中継を見ていたから、切られている部分を特定することが出来たが、見ていなければそれは分からない。そしてぼくは気付いたのだった。なぜ万歳のフライングが起こったのか。
日本は内閣がどんどん変わる國であるし、解散も何度も行われてきた。その解散の場面は毎回テレビ報道されてきた。その場面で、「御名御璽」の文言が流れることはなく、常に「衆議院を解散する」の後はカットされ、万歳三唱の画面になっていたのだろう。けしからぬ話しではないか。そうした画面を見続けた人は、間違いなくフライングをしてしまって、何の不思議もないのだ。
だから、このフライングを不勉強などとなじるのは全く間違っている。その責めを負うべきなのは、解散の詔書の全文の読み上げを流さず、カットし続けたと思われるNHKを始めとするテレビ各社なのである。
この解散の中継でもう一つ気付いたことがあった。民主党席の議員さん達は万歳をしなかった。この解散に正義がないからという説明がされていたようだが、これまでは万歳していたのだろうか。しようとしまいとそれは勝手なのだが、だいたい万歳がきらいな人たちが民主党には多いのではないかという気がするのだ。
正義ではない侵略戦争を行った日本軍が天皇陛下万歳と唱えたから、天皇も嫌い、万歳も大嫌いという人が多いのではなかろうか。だから彼らは、万歳といわずにもっぱら「がんばろう」と唱える。日の丸掲揚に反対する人は万歳はしないし、「君が代」もお嫌いのようである。そういう人たちが、一気にではないけれど、少しづつ減ってゆく。それとともに日本が普通の國になってゆく。
ぼくがむかし、初めての外国で、カラチの大使館に高くはためく日の丸を見上げて、高揚感を覚えたような感覚で、日本の人たちが、日の丸を眺め、「君が代」を唱い、万歳を唱えるようになる。そんな人たちが、増えてゆくことを願っている。
この衆議院解散の動画はYouTubeに上がっているので、リンクを張っておきます。 衆議院解散の動画