北杜夫の『白きたおやかな峰』

 プログに書くことになって、本棚を探し、『白きたおやかな峰』を引っ張り出した。
 いまは長い年月の末に赤茶けているけれど、かつての純白のハードボックスは、その強固さをいまも保ち、ずっしりとした手応えのある書物である。
 ボックスの裏の右下角には、ちいさく¥490とあった。
 この本の出版は遠征の翌年1966年である。今の値段にしたらいくらになるのだろう。興味を覚えて、物価指数やら大卒の初任給の推移などから計算してみたところ3700円となった。
 箱から取り出すと、まずビニールシートに覆われてカバーがある。カバーには有名版画家畦地梅太郎の版画があった。

 カバーを外すと、ライトブルーの布の硬表紙が現れる。どちらかといえば小さめの活字で、つつましく銀色の文字で「白きたおやかな峰」が刻印されている。

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